【ランピースキン病】福岡や熊本で確認 牛痘との違いは?
ランピースキン病 国内で初確認
ランピースキン病ウイルスによって引きおこされる牛や水牛の病気「ランピースキン病」が、国内で初確認されました。
2024年11月6日、福岡県の乳用牛飼養農場において国内1例目が確認され、現時点(11月14日)では福岡県の3農場(乳用2農場、乳用・肉用1農場)、熊本県の1農場(乳用)で発生が確認されています。
ランピースキン病とは
ランピースキン病はランピースキン病ウイルス(ポックスウイルス科カプリポックス属)によって引きおこされる牛や水牛の病気です。
感染した牛は、⽪膚の結節や⽔腫、発熱、泌乳量の低下など様々な症状がでますが、死亡率は高くなく、自然治癒します。
ランピースキン病への対策としては、発症⽜の早期発⾒、隔離、移動の⾃粛、ワクチン接種等、総合的な防疫対策により、発生及び感染拡大を効率的かつ効果的に防止することが重要とされます。
「ランピースキン病」と「牛痘」の違い
ランピースキン病と牛痘は、ともに牛に感染するウイルス性の皮膚病ですが、病原体や症状などが異なります。
牛痘の病原体は、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属であり、天然痘(痘瘡)の病原体と同属です。
ランピースキン病 | 牛痘 | |
---|---|---|
病原体 | ポックスウイルス科カプリポックスウイルス属 | ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属 |
症状 | ⽪膚の結節や⽔腫、発熱、泌乳量の低下など | 乳房に多数の痘疱 |
人への感染 | 感染報告なし | 非常に稀な感染例あり |
「牛痘」は天然痘の撲滅に大きく貢献
イギリスの酪農地帯では古くより、牛痘の流行がたびたびおこっていました。
その ようななかで、イギリスの医学者エドワード・ジェンナーは以下の【事例】から、あることを考えつきました。
【事例】
牛痘ウイルスに感染した牛の乳房にできた痘疱に、人が乳搾りの際に接触すると、その際に人の手の傷から牛痘ウイルスに感染し、水疱を発症する。その後2〜3週間後、かさぶたとなって治癒した。
牛痘に罹患した牛の乳搾りを行っていた人たちは、天然痘にかかりにくい。
⇒牛痘にかかると天然痘に対する抵抗性ができるのではないか。
この考えから、エドワード・ジェンナーは「乳搾りを行う女性にできた水疱から液体を取り出し、その液体の一部を人の腕につけた傷から接種する」という実験を繰り返しました。
天然痘の予防法「種痘」
エドワード・ジェンナーがおこなった上記の実験が、「種痘」とよばれる天然痘の予防法および、天然痘ワクチンの開発につながりました。
「種痘」は、天然痘ほど危険とされない牛痘にかかった人の膿を、まだ天然痘にかかっていない人に注射をし、天然痘の抗体をつくるという方法です。
この方法は、天然痘の撲滅へと大きく貢献しました。
その後の1980年5月、世界保健機関(WHO)により天然痘の世界根絶宣言が行われました。
参考
▷種痘はワクチンの先駆け 理化学研究所 生命医科学研究センター