換気(空気)の重要性 2024年3月号

皆さんの農場では空気の動きをチェックするスモークテスト、舎内の二酸化炭素濃度(同時に温度と湿度も測定出来るものもある)を測定するツールなど、活用しているでしょうか。今回の話は、これらツールを使用した方が良いと言う話では決してありませんが、豚たちにとって、呼吸したときに新鮮で清々しい空気を取り込める環境とそうでない環境では明らかな生産成績の格差生むことになります。
 
農場から質問があることの1つに、成績が良い農場では何をやっているのですか?があります。この質問に対する回答はとても単純です。疾病問題が無い農場はないとは思いますが、成績が良い農場ではまず余計な敵を作っていません。又、手間の掛かる作業や治療行為自体も圧倒的に少なく出来ています。
成績が良い農場では、治療に掛かる時間と経費が大きな負担(そもそも間違った治療方法と対応方法を行っていると2倍、3倍・・と経費が増大していく)と言うことが解っているので、そもそも治療しないで済む環境になるように仕向ける事前の準備と根回しが仕事の本質になっています。又、外部班が糞尿処理をしっかりと行っている状態(ピット下の環境整備)であれば、離乳子豚舎、肥育舎の仕事は餌と水と空気を管理するだけで済みます。離乳子豚舎では如何に大きく活力のある状態で肥育舎へ移動させることが出来るか、肥育舎ではそのバトンを受け取って、如何に無駄のない飼料管理で枝重量と頭数と規定日齢内での出荷に持って行けるかを目指すことに尽力します。
 
豚は人間よりも嗅覚に優れ呼吸する回数も多いのが特徴です。人が何とかなる環境のままでは、豚たちにとっては死活問題になるまで弱ってしまうことになります。特に子豚舎の後半時期(50日齢頃~)、肥育舎の後半時期(120日齢頃~)で呼吸器系症状、消化器系症状、発育停滞などの問題が多々見られる農場では、疾病以外の原因として、換気面(空気)にも着目することをお勧めします。
 
換気(空気)と一概に言っても、農場毎の設備や考え方はまちまちとなり、答えが1つではないことも事実です。しかし、どのような設備であっても変わらない事実は存在します。1つは、豚の健康的な成長には新鮮な空気が必要であること、もう1つは豚は寒さと暑さでは滅多に死なないことです。豚の調子が崩れる際には必ず、その体に生じる体感温度変化(寒暖差、日格差)が大きく影響することが解っています。カーテンがある畜舎ではやはりカーテンが主役となり、ここに武器として取り入れている各種ファンの使用を組み合わせます。陰圧式のウインドレス舎であれば、入気口の確保と排気ファンの数、大きさ、設置位置、最低換気量、第一ファン、第二ファン、第三ファンなどの稼働条件の設定も重要となります。過換気の環境、換気不足の環境など、その使い方次第では、日々の環境を大きく変化させてしまうことにもなります。当たり前ですが、入気が足りているか、入気の空気はきれいか、外側にある入気口はチェック出来ているか、通路側にある入気口はチェック出来ているか、夏季であれば入気する空気は涼しいのか、排気場所からしっかりと排気されているのか、フードに塵埃や結露が無いか、排気量自体は足りているのかなど、常に考えること、常にチェックすることも必要となります。養豚には5つの重要な管理要素が存在します。この5つは飼料、水、空気、光、温湿度で構成され、ワクチンや薬剤などはこの5つの管理要素がしっかりと成り立った上で初めて価値のある対応へと昇華します。全てのものが高騰して経営を圧迫している今だからこそ、基本に立ち戻り、使用するものへの費用対効果を高めて行きましょう。
 

確認事項、チェックするもの

①カーテン。
カーテンの張り具合、たるみ、隙間、補修部分の有無。
②モニターカーテン。
モニターカーテンの張り具合、たるみ、隙間、補修部分の有無。
③入気ファン。
入気ファンがどこの空気を入気しているのか、本当に入気になっているのか、稼働設定はどうなのか、風の動きはどうなのか。
④排気ファン。
排気ファンがどこの空気をメインで排気しているのか、本当に排気として機能しているのか、稼働設定はどうなのか、風の動きはどうなのか。
⑤順送ファン。(サーキュレーター、メーターファンなど)
順送ファンが稼働したときの風の動きや流れはどうなっているのか、稼働設定はどうなのか、そもそも必要なのか。
⑥ビニールダクトファン。
ビニールダクトファンの性能、ダクトビニールの長さ、設置場所、設置数、設置の高さ、穴の角度、穴の大きさ、穴の数、圧の掛かり具合、どこの空気を取り入れているのか、稼働設定はどうなのか、風の動きはどうなのか。
⑦暖房機器設備。(ガスヒーターなど)
暖房機器の性能、設置場所、設置数、設置の高さや角度、稼働設定はどうなのか、風の動きはどうなのか、舎内に温度ムラがないか、乾燥環境になり過ぎていないか、稼働⇔停止を頻繁に繰り返していないか。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。
 
 

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