豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)

豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine reproductive and respiratory syndrome:PRRS)

病因:

トガウイルス科アルテリウイルス属PRRSウイルス(以下PRRSと示す)。
エンベロープを保有する。 PRRSは繁殖障害や呼吸器病にかぎらず、あらゆる病態に関与するウイルス性伝染
病であり、ウイルスの性質や感染、発病、免疫のメカニズム、発病症状等、まだ解明されていない部分が多い。
PRRSは伝播力が強くマクロファージで増殖するので、全体の免疫力が低下し、他の疾病との複合感染を起こしやすい。
感染経路は、感染豚の移動、導入及び出荷屠畜場での汚染、空気感染等が最も多く、感染豚は、ウイルスを体内に長期間保持し、鼻汁、唾液、糞尿、精液等に多量のウイルスを排泄する。
一番の問題は、体内の免疫物質であるマクロファージが破壊されてしまうので、体の免疫力、抵抗力が低下することである。

症状:

APRRSの臨床症状については、日齢、免疫の程度、衛生環境、管理状態、感染量等の要因により異なり、感染後、全体の免疫力が低下し、様々な合併症状を引き起こす。
症状としては、一過性の発熱、食欲減退、繁殖障害全般、無乳症、子豚〜肥育豚の発育不良、激しい腹式呼吸、呼吸器症状(へこへこ)、死亡等が現れる。

哺乳豚:食欲不振、持続型の発熱、腹式呼吸(呼吸困難、ヘコヘコ)、一部では器官端のチアノーゼ。
妊娠豚:妊娠6週間以上のものが早産、流産、死産(一部ミイラ胎児の娩出)を起こす。
種雄豚:精液性状に異常(精液量の減少など)を認めることがある。
新生子豚:活力減退、股開き、下痢等が認められ、二次感染も起こりやすい。
離乳豚:肺炎症状は典型的で、生後6〜10週令に発症が集中する。
すなわち離乳後2〜3週目で子豚の元気がなくなり、食欲不振、発熱、腹式呼吸が目立ちだす。
更に、他の常在細菌により二次感染を起こし、事故率が上昇する。

対策:

その農場毎の症状に合った対策を行うことが必要です。

(1)ワクチンプログラムによる予防。
⇒農場の症状等により、実行するプログラムに違いがありますので注意して下さい。
(2)飼養管理、飼養環境等の改善。⇒ストレス、他の疾病感染、飼育密度の増加、環境悪化等により疾病が誘発され、症状が悪化します。豚舎の温度、湿度、飼養密度、換気量の管理、給餌・給水機のチェック、清掃、消毒の徹底など日頃の管理衛生対策を強化する。導入豚の隔離視察、異常産が見られた母豚の隔離。
(3)種豚群の能力(免疫等)の安定化。
(4)PRRS以外の疾病群の対応。

  • ・根本的な治療は困難なため、二次感染を抑えるため有効な抗菌性薬剤等の投与。
  • ・異常産が見られた場合には、生産産子については、(1)初乳の給与(2)電解質液の投与
  • ・鉄剤注射は3日間、断尾は3〜5日間遅らせる、犬歯の切除は行わない。
  • ・異常産が見られた母豚については高エネルギー飼料を給与し、乳質の確保する。
  • ・感染免疫が成立する分娩(流産)後21日までの種付けを中止。

類似疾病:

日本脳炎(JE)・オーエスキー病(AD)・パルボウイルス感染症(PPV)・トキソプラズマ(TOXO)

診断:

類似疾病が多いので、特徴的な臨床症状(異常産、離乳豚の腹式呼吸など)により本病を疑い、確定診断は、ウイルス分離(PCR法)、抗体検査(間接蛍光抗体法)など。

◎抗体価:

・ELISA法 ・間接蛍光抗体法

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