牛白血病(BLV)

病名・病原体

病名:牛白血病
病原体:牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)【地方病性白血病】

牛白血とは

ウイルス感染による地方病性白血病(EBL)と、ウイルス感染の関与が確認されていない散発性白血病(SBL)の総称です。
SBLはさらに子牛型、胸腺型、皮膚型に分類されるが、いずれもウイルスの関与はなく原因不明と考えられています。

疫学・症状

BLVは牛のBリンパ球に感染するため、感染牛の血液、乳汁が感染源となります。
主な感染経路
・アブなどの吸血昆虫による機械伝播
・去勢、除角、直腸検査などの出血を伴う医療行為による水平伝播
・胎内感染や経乳感染も成立します。

EBLとSBL 共通の特徴
リンパ腫であり、体表リンパ節や直腸検査による骨盤腔内の腫瘤の触知などにより診断可能

EBLの特徴
(1)4~8歳で発症することが多い
(2)削痩、元気消失、眼球突出、下痢、便秘
(3)末梢血液中には常に異型リンパ球の出現がみられる。
(4)感染牛の全てがEBLを発症するわけではなく、60~70%は無症状キャリアーとなる。
(5)約30%は持続性リンパ球増多症(PL)を呈するが、臨床的には正常とされる。
(6)数ヶ月~数年の無症状期を経て、数%の感染牛はBリンパ球(CD5陽性、sIgM陽性)性白血病/リンパ腫を発症する。

SBLの特徴
(1)子牛型(6ヶ月未満):全身性のリンパ腫
(2)胸腺(きょうせん)型(6ヶ月~2歳未満):胸腺のリンパ腫
(3)皮膚型(2~3歳):全身にイボ状病変が形成されます。

診断

牛白血病は届出伝染病として指定されているため、疑われる症状が確認されましたら、速やかに獣医師または家畜保健衛生所に相談してください。

EBLの場合は抗体またはウイルス検出により診断する。
(1)寒天ゲル内沈降試験およびELISA法による抗体検出
(2)PCRによる同定

SBLの場合は臨床症状により診断する。

予防・治療

本疾病に対するワクチンや治療法はありません。
定期検査によりBLV感染牛を確実に摘発し、隔離または淘汰します。

(1)吸血昆虫対策:
害虫駆除:特にアブが重要です。
アブが感染牛を吸血する際、感染血液を口器に付着させたまま、血液が乾燥しないうちに
新しい宿主を吸血すると、感染が成立することがあります。

(2)人為感染対策:
採血や注射時ならびにワクチン接種時に1頭1針を徹底します。
直腸検査時にポリ手袋を1頭毎に交換します。
除角、去勢、断尾、削蹄、耳標付けなど出血を伴う処置に器具は1頭毎にきちんと消毒します。

(3)子牛への感染防止:
感染牛の初乳や常乳中にはリンパ球が含まれており、子牛へのBLV感染源となります。
垂直感染もおこるので感染牛の初乳および常乳は子牛へ給与しないことが原則です。
また、子牛はBLV感染の検査を行うことも有効です。
どうしても感染牛から初乳および常乳を与えなければならない場合は以下の方法によってウイルスを殺滅してから行います。
ウイルスの殺滅方法
-20℃の冷凍庫で完全に凍結する または 56℃で30分の加温によりウイルスを完全に不活化してから給与する。

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