パスツレラ

P.multocidaの肺炎症状でもっとも多くみられる病変部位は胸腔内の変化が特徴的で、肺の病変は前葉および後葉にもっとも多くみられる、肺炎症状で急性経過の死亡例の肉眼的所見は、肺に斑状の暗赤色~灰白色を呈する限局した病巣が散在する。病巣は肺の深部にまで及び、患部はやや硬い。経過がやや長い場合は、病巣が大きくなり、硬化、肝変化が強くなる。このような例では肺胸膜に繊維素が析出して心嚢および壁側胸膜と癒着し、胸膜炎を併発している。肺の癒着がみられる例淡黄色の滲出液が胸腔内に貯留し、肺門リンパ節には軽度の腫脹とうっ血がみられる。胸腔以外の臓器にはほとんど変化が見られない。肺炎症状での組織学的変化は、死亡例では肺の出血、肺胞内に好中球および大食細胞の浸潤、間質の水腫などがみられ、肺門リンパ節では洞内に好中球の浸潤がみられる。また、膿瘍や巣状壊死もしばしばみられる。出血性敗血症の肉眼的所見は、自然感染の場合は点状ないし斑状の出血が各臓器の漿膜や粘膜に広範に認められ、肺のうっ血と水腫、腎臓のうっ血と尿細管の退行性変性、急性リンパ節炎などが認められる。また、肝臓では軽度の混濁腫脹と巣状壊死が認められる。パスツレラ肺炎は臨床的にほかの原因による肺炎や発熱をともなう疾病とは区別できない。とくにActinobacillus pleuropneumoniae感染による胸膜肺炎とは発病の誘因、好発日齢などが共通し、剖検所見がきわめて類似しているので、類症鑑別に注意を要する。肺炎症状と胸膜肺炎との差は、両者ともに主病変は繊維素性胸膜肺炎であるが、パスツレラ性肺炎に比し、胸膜肺炎では肺の出血巣が広範囲にわたり、肺胸膜下に大量の線維素が付着することが多く、癒着が強い。また、線維素を含んだ胸水および心嚢水の増量が強く、ときには赤色の胸水がみられるなど病変の強いのが特徴であるが、剖検のみでの鑑別は難しい。したがって確実な診断は細菌検査によらなければならない。<豚病学 第四版より抜粋>O-N100310

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