増殖性腸炎、回腸炎(PHE)

増殖性腸炎、回腸炎(PHE)

病因:

以前はCampylobacterが原因菌であるとされていたが、その後の研究、報告から、今現在はLawsonia intracellularisの存在があきらかになり、このLawsonia intracellularis が回腸炎の主要な原因菌であることが報告された。
回腸炎は、6〜24週齢の豚や種豚にも発生する。不顕性感染に終わるものが多いが、症状が重篤の場合死亡も起こる。
しかし近年、成長促進作用のある抗生物質入りの飼料の禁止や、抗生物質そのものの飼料への添加が減少傾向にあり、皮肉にも回腸炎の発生が世界的(アメリカ、イギリス、その他EU諸国等)に増加している。
回腸炎は、ほとんどの農場ですでに感染しているものと思われ、その農場での発病の機会を伺っている。

症状:

画像_HPS回腸炎の臨床症状は、食欲減退、発育不良、下痢症状、咳の多発、尾かじり・腸捻転の増加等が認められる。
重篤症状の場合は、急激な腸管内出血と重度の貧血、黒色タール様便の排泄等が認められる。
この場合の死亡率は50%にのぼることもあり、回腸から回盲部にかけて血液塊と大腸には黒色タール様便が充満している。
重症例から耐過する場合も多く、その場合は保菌豚となり、他の豚への感染源となる。

対策:

その農場毎の症状に合った対策を行うことが必要です。

(1)薬剤プログラムの見直しを行う。
⇒タイロシン、リンコマイシン、チアセプチン等の薬剤が有効とされているが、他の疾病との合併症状もあるので、その農場毎の症状に合った薬剤プログラムが必要になります
(2)飼養管理、飼養環境等の改善。
⇒飼育密度の低下、飼養ロット(日齢)の幅を大きくしない、ストレス防止、消毒方法の見直し、飼料レベル及び内容、給餌方法等に急激な変化をさせない、種豚の一元化、オールイン・オールアウト等。
(3)回腸炎以外の疾病群の対応。

類症鑑別:

  • ・豚赤痢・豚の壊死性腸炎・豚のサルモネラ症・豚胃潰瘍

剖検所見:

  • ・回腸粘膜の肥厚と凝固血栓又は偽膜の付着(必ずしも出血は伴わない)
  • ・盲腸の血液貯留
  • ・回盲部における粘膜の肥厚
  • ・筋層の肥厚、粘膜の壊死

診断:

  • ・PCR法による遺伝子診断
  • ・回腸粘膜材料を材料としたnested PCRを実施し、確定診断を行う。
youtube