ここ最近のかじり行動 2023年4月号

かじる行為は昔から見られる豚の異常行動であり、発育停滞や疾病併発による事故の増加だけではなく、出荷豚自体の販売価値も著しく低下させ、経営に多大な損失を与えるとても厄介な悪質行動となります。皆さんの農場でもその程度の違いはあれ、かじり行為を経験している人、過去に経験した人は多いのではないでしょうか。今回はこのかじり行動について取り上げたいと思います。

 

筆者がここ数年で感じていることですが、かじり行動が発生する頻度やその出方(程度)について、今まで知っていたかじり行動とはまったく異なるレベルの発生事例が全国で増加している傾向が見られます。

 

今までのかじり行動は、飼養密度(密飼い)、換気面(換気不足、過換気)、栄養面(塩分、ミネラルなど)、断尾の術式(長さの良し悪し)、おもちゃ(種類によって効果はまちまち)などの対応によって、ほぼ解決出来ていたように思います。しかし、ここ最近で見られるかじり行為はそう甘くはないようです。今までと同じようにかじり行動への対策を行って、一見良くなる感じも見られるのですが、その効果は長続きせずにすぐ再燃、気が付いた時には群の殆どが酷く齧られているなど、今までの常識の範囲からは逸脱している行動が目立ちます。異常とも思える齧ることへの執着で、炎症や損耗、膿毒症や増体不良などに転じて売り物にならないなどの被害が増加しています。

もう一方で見られる行動としては、GPやPS単位での発生、明らかに薄飼い環境の飼養条件での発生、ロット毎(腹ごと)に発生頻度や重篤度が異なるなども目立ちます。尾かじりについては断尾の長さの調整、おもちゃの投入、塩分の添加、換気管理の見直しなどを行ってもあまり好的に向かないことも特徴かも知れません。この手のかじり行動には明らかに遺伝的な要素も絡んでいることを踏まえて対応しなくてはいけないと感じています。

 

酷すぎるかじり行動が緩和された実例としては、1.群の最適化(全体の飼養密度ではなく1群・1豚房当たりの飼養頭数を40頭以下に制限)、2.齧る犯豚探しと隔離(診回りと対策の強化)、3.種豚系統の見直し(雄系、雌系など、遺伝的要因も大きく疑われる場合)、4.今まで常識とされた尾かじり対策の組み合わせによる根気強い対応(断尾は3分の1~4分の1を残すカット、目安は1.2~2㎝で揃える、日齢と頭数に見合った入気と排気の管理、過換気や風当たりはタブー、日齢と頭数に見合った給餌器と給水場所の確保)があります。又、追加で行っているものとして、農場毎で反応の良し悪しが異なりますが、かじり行動の緩和を目的とした飼料添加用資材を活用することも一考と思います。いずれにしても最近の酷いかじり行動を撲滅するためには、1頭目の発生をしっかりと目視するための早期チェックとその犯豚に対する早期対応がものを言います。昨今では多産系種豚の採用が全国の農場で進んでいることもあり、農場で飼養される雌系や雄系の組み合わせにも変化が生じて来ていますので注意して行きましょう。

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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