消化器系疾患と薬剤について 2023年5月号

消消化器系疾患の対応に、飼料添加薬剤、飲水用薬剤、注射薬剤などをメインで使用している農場が多々見られます。ここの全てが問題となることではありませんが、元々消化器系疾患の原因菌の中には常在菌もあり、薬剤中心の対処療法では薬剤耐性の問題、腸管細菌叢のバランス、胃腸への過度の負担なども考慮する必要があります。したがって、消化器系疾患の対応に薬剤を使用する際は注意する点が多くあり、多剤薬剤の多用行為、薬剤濃度の不備、薬剤投与期間の不備は逆効果、逆影響を招きかねないので十分な注意が必要です。

 

さて、消化器系疾患には、

 

①哺乳子豚の早発性下痢、遅発性下痢、水様便、軟便。
②離乳後子豚の軟便、泥状便、水様便。
③肥育豚の軟便、泥状便、水様便、血便。
④種雄豚の軟便、泥状便、水様便、血便。
⑤育成豚の軟便、泥状便、水様便、血便。
⑥導入豚(PS、GP)の軟便、泥状便、水様便、血便。
⑦交配舎母豚の軟便、泥状便、水様便、血便。
⑧妊娠舎母豚の軟便、泥状便、水様便、血便。
⑨分娩舎母豚の軟便、泥状便、水様便、血便。

など、ステージごとに問題が存在しています。この中でも④~⑨の種豚群での消化器系疾患の報告も多くなっています。ここへ呼吸器系疾患が絡めばさらに症状は悪化し、結果として薬剤の使用量や治療回数も多くなって豚体への負担、経費も増すことになってしまいます。

 

このような状況もあって、薬剤の選択、使用量、使用方法について、その見直しやコントロール、プログラムの再構築や検討などの相談も多くなっています。消化器系疾患を目的にした薬剤選択は色々気を使うべきポイントがありますので、在庫があったから・・、倍量使用すれば・・、たぶんこの疾病だから・・など、曖昧な根拠で使用することは止めましょう。胃腸の負担も増加し、胃腸粘膜も弱くなり、要求率も悪化し、敵ではなかった微生物群を敵に回す、敵に育てることにもなり兼ねません。消化器系疾患の原因には、飼料管理周辺、飲水管理周辺、空調管理周辺、糞尿処理周辺、出荷計測方法、治療方法などに問題があった事例も多々見られます。問題や課題を正確に洗い出し、的確な対処方法で行うことをお勧めします。

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。

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