カビ毒は軽く見てはいけない 2023年7月号

カビ毒は結構な場面で聴きなれた文言であると思います。そのこともあってか、話題になりやすいPRRS、サーコ、連鎖球菌などとは異なり、気にしているようで気にしていない、気にならない状態になっているような気がします。
実際にカビ毒で大きな損害を被った農場は結構存在します。皆さんの農場でもカビ毒による豚達への影響は決して他人事ではなく、多かれ少なかれ、どこの農場にも存在し、豚達の体調や免疫状況にその影響を与えています。

 

①季節は関係なくなった。
カビ毒は季節的には夏、ジメジメした梅雨時期の発生や被害が思い当たると思います。しかし、現在は飼料原材料の課題、運送会社との課題、舎内設備や環境の課題なども重なって、一年中の害として問題視されています。

 

②カビ毒は身近な厄介者です。
人間も日々、カビなどの“雑菌群”にさらされながら生活しています。当然、大なり小なりのレベルは有ると思いますが、決して無菌での生活ではありません。これが農場や畜舎ではどうでしょうか。汚い、綺麗レベルの話では無く、飼料の粉塵、糞の粉塵、毛、結露、老朽化など、あらゆる飼養環境の狭間で生活を行っている分、さらに雑菌としての存在が多くなり、カビが存在しない農場は無いに等しいと思います。

 

③被害の原因がカビ毒とは思わなかった。
カビ毒は大きな疾病とはことなり、ジワリジワリとその体を蝕み、生産成績を悪化、飼料費や衛生費を悪化させることがわかっています。あまり気にしていなかった農場でもその静かな侵攻と被害で気が付くのが遅れてしまった結果、これもカビ毒の影響だったのか・・もう少し真剣に対応していれば・・と頭を抱えることもあります。

 

④カビ毒は身近?
私たち人間も日々、カビに代表される“雑菌群”にさらされながら生活しています。当然、大なり小なりのレベルは有ると思いますが、決して無菌での生活ではありません。これが農場や畜舎ではどうでしょうか、汚い、綺麗のレベルでは無く、飼料の粉塵、糞尿の粉塵、結露など、あらゆる飼養環境の狭間で生活を行っている分、さらに雑菌としての存在が多くなり、カビが存在しない農場は無いに等しいと思います。

 

⑤カビ毒の害。
カビの害で厄介なのはそのカビが産生する“カビ毒”による影響です。その中でも赤カビが産生するカビ毒のトリコテセン(デオキシニバレノ―ル、T-2等)、ゼアラレノン、フモニシンは豚にとって極めて有害になりやすいやっかいな存在です。このカビ毒自体は無味無臭のため農場内で気が付かないうちに汚染の輪を張り巡らします。カビ毒に汚染されると、生産成績の低下や薬剤やサプリメントなどの効果も表れにくい状態に陥る危険があります。

 

・トリコテセン(デオキシニバレノ―ル、T-2等):食欲低下、嘔吐、下痢、免疫障害、壊死、耳介の出血。
・ゼアラレノン:外陰部腫大(母豚、子豚)、流産、乳腺の腫れ、乳頭発赤(子豚)、股開き症(子豚)。
・フモニシン:肝機能障害、肺水種。
・アフラトキシン:成長遅延、肝障害、免疫抑制。
・オクラトキシン:腎障害。

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。

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