格付け条件の変更ー売りを強くするために 2023年2月号

今年1月から枝肉取引規格の重量範囲の引き上げがスタートしました。今までの「上」規格65㎏~80㎏から新しい「上」規格68㎏~83㎏に引き上げられた形です。この規格改正がもたらすメリットは、年間出荷枝肉重量がアップすることで生産コストの削減や、と畜経費の削減に繋がる期待が込められています。又、枝肉重量がアップすることはその食味も総じて増す可能があり、ここの点からもさらに期待が込められているように感じています。しかし、全てが喜ばしいことばかりではありません。今回の改正に伴い「上」規格の下限値も今までより+3㎏になっている点や、重量規格は変更になったものの、背脂肪の規格は今まで通りのままの点など、結構注意することもあります。今回の改正で得られる恩恵を最大とし、最終の売りで損をしないようにするためにも、今まで以上に出荷体重の測定と統制、自社の売り条件と枝肉流通及び小売販売のニーズ把握、肥育舎のキャパなどは再確認するようにしてください。

 

さて、今まで円安傾向にあった為替は少しだけですが円高に傾いて来ています。しかし、まだまだ円安の影響は大きく、国産豚肉は外国産の輸入豚肉よりも取り扱いがしやすい状態となっています。スーパーや小売店などを覗いても、国産豚肉のコーナーが広くなっている光景も目に付くようになりました。消費者側が常に思っている豚肉に対する意識として、“価格の安さでは外国産”、“品質や美味しさでは国産”と言った考え方は以前からあまり変わっていないように感じます。今回のような状況をきっかけにして、国産豚肉を購入する機会が増えてくれれば、その美味しさに対する豚肉の価値(認識、常識など)も良い方向へと広まり、国産豚肉に対する購買意欲はさらに加速するものと考えています。

 

少し余談な話となりますが、豚肉にも旬と称される時期があることはご存じでしょうか。(ただし、一年中が旬でいつ出荷しても美味しい豚肉を維持している生産者の方々も当然おります)時期は秋季後半~春先と言われ、特に冬季間で出荷される豚肉は成長速度と脂身と赤身のバランスが良いこともあり、最も美味しいと言われています。この時期に出荷された豚達は与えられた飼料をしっかりと食い込んでいて、枝重量も安定しているので非常に喜ばれるのだと思います。

 

豚肉にまつわるお話をもう少しだけさせて戴きます。筆者の妻の知人に豚肉嫌いのご家族がいました。このご家族は厳密にいえば豚肉を嫌っていたのは小学生の息子さんであり、スーパーで購入した豚肉は一切口にしなかったそうです。とある時に私の妻が我が家で年末に戴いた美味しい豚肉を分けてあげたい、美味しい豚肉を知らないままの人生なんて可哀そうだからと言ってきました。私は少し不安でしたが、相手のご家族も食べて見たいとのお話があり、私が故意にしている養豚場様の豚肉を食べて戴いたことがあります。その後、そのご家族から連絡が入って嬉しい報告を受けたことは言うまでもありません。今まで出来なかった豚肉を囲んだ家族団欒の食事が出来た・・戴いたお肉は嘘のように息子が全て食べてしまった・・との報告を聞いた時に、私は子供たちにこそ本物の味を味わう機会、家庭や学校や課外での食育が如何に重要な位置を占めているかを思い知らされたのを覚えています。

 

弊社では疾病関連の検査は元論ですが、肉質に関わる評価の検査も実施しています。養豚業は育てて終わりの業態ではありません。売ってなんぼ、購入して貰ってなんぼ、儲けてなんぼの世界です。

 

別添にうま味評価シート、遊離アミノ酸検査、飽和及び不飽和脂肪酸検査などの雛形を提示しています。特にうま味評価シートは見やすいグラフと表での報告とになりますので役立てて戴いている生産者は増えています。

 

今回はこの手の検査もあることも知って戴ければ幸いです。皆さんが一生懸命に育てた豚達を、しっかりと流通、販売の軌道に乗せて、農場利益の向上と販売促進に役立てて戴けられるようにさらに努めたいと思います。

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

 

肉質検査結果の一例

 
総合評価レーダーチャート
 

 

 

検査結果数値
 

 

youtube