オリモノを考える 2022年11月号

暑かった夏が過ぎ去り、季節は秋になり、冬を迎えようとしています。秋季は夏季の暑熱の影響を受けた種豚群の体調が崩れやすい季節とも言われます。又、豚熱ワクチン接種の都道府県別の有無が影響している種豚更新の乱れも生じています。このこともあって、飼養している種豚群が高産歴側に傾いている生産者も少なくはないと思います。

さて、今回の話のテーマであるオリモノに戻りたいと思いますが、オリモノには正常性のオリモノと異常性のオリモノとが存在することはご存じでしょうか。分娩後の分娩舎期間中に見られるオリモノは異常性である可能性は高く、交配後(ただし、一周期以内)のオリモノではその状況や状態に応じて正常性のものも存在します。

このようにオリモノ自体は正常でも起こることはあり、その殆どは分娩後や交配後の早い時期に発生することがあります。正常側のオリモノは量も少なく、臭いもなく、黄色や血色などの色変化も見られません。異常と判断されるオリモノ(悪露)は、子宮内膜炎、子宮回復遅延、不受胎、再発、廃用などの成績悪化を助長します。高い繁殖成績を出す昨今の種豚群では、お産成績に伴った体力や免疫力が減少し、ホルモンバランスも乱しやすい傾向があり、このこともオリモノ(悪露)発生の一助になっている可能性があります。

粘性が高く、黄色系のオリモノ(悪露)は、子宮、子宮頸管、膣などの生殖器の炎症、粘性がない粘液の膿や血液交じり、血尿などは、膀胱、腎臓、外陰と膣の泌尿器の炎症、粉のような沈殿物を有する場合は、腎臓又は膀胱での尿沈殿物の混在、血液そのものが排泄される場合は、子宮頸管か子宮内部の裂傷の可能性があります。

異常とされるオリモノ(悪露)は細菌感染の関与が指摘されます。オリモノ(悪露)に関与しやすい細菌については、黄色ブドウ球菌、白色ブドウ球菌、プロテウス菌、大腸菌、連鎖球菌、緑膿菌、レプトスピラ、豚丹毒菌などがあります。オリモノ(悪露)自体に細菌が関与することは間違いではない分、薬剤による対処療法も有効とはなります。ただし、どの薬剤に効果があるのかについては、薬剤耐性の問題もありますので、オリモノ(悪露)検査を実施することをお勧めします。原因している細菌を的確に確かめて、その細菌の薬剤感受性試験を行えば農場で使用する薬剤が解ります。

 

  • 正常か異常かの見極め。(100%の判断ではありません)

・量が少ないか、量が多いか

・臭いがないか、臭いがあるか

・色がついているか(黄色、褐色、血交じり)、色がついていないか

・粘性がないか、粘性が高いか

・分娩後すぐか、分娩後5日目以降か

・交配後すぐか、交配後10日目以降か

 

  • 記録の保管。(上記1は必ずチェック)

・分娩舎での分娩成績

・離乳後の発情再帰日数

・離乳後の発情状況

・交配後の受胎成績

 

  • 管理上の注意点。(悪露、不受胎になりやすい項目)

・難産

・胎盤及び胎児、剥離した組織の残存

・お産時間の延長

・飲水不足

・栄養不足

・不衛生な床面

・濡れている床面

・陰部や陰部周りの糞尿汚染

・犬座姿勢の長期化

・強い風当たり

・下半身の冷えと濡れ

・AI交配回数の多さ

・AI交配時のAIゼリーの未使用

・本交配の場合は雄豚の包皮ケア

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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