農場の飼料添加剤を考える 2022年9月号

飼料価格や燃料価格や資材価格など、様々な物が高騰しています。その中で動物用医薬品についても例外なく、高騰の波が押し寄せています。“高ければ使わないで済まそう”が出来るようであれば大きな問題はなく、簡単に済みそうなのですが、そうは単純ではないのが養豚現場の実情と思います。今回は、現場で使用する飼料添加剤について考えて見たいと思います。

 

飼料添加剤と飼料添加物の違い

飼料添加剤と同じような言葉で、飼料添加物があります。飼料添加物とは、飼料の品質の低下の防止、飼料の栄養成分その他の有効成分の補給及び、飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進を目的として、飼料工場で添加、混和されています。飼料添加物の承認は農林水産大臣が行い、農業資材審議会の意見を聞いて成分毎に指定されています。

そして、今回お話をする飼料添加剤は、動物用医薬品に含まれ、農場側で飼料に混合して投与する薬剤となり、獣医師の処方の下で飼料への配合が行われています。

 

EU及び米国と日本の違い

日本とEU及び米国では飼料添加物と動物用医薬品の取扱いの規制はかなり異なっています。例えば抗菌性物質の場合、日本とEUでは、抗菌性物質をその用途によって飼料添加物と動物用医薬品(飼料添加剤)に区分していますが、米国では飼料に添加して用いられる抗菌性飼料添加物はすべて動物用医薬品としてひとつのカテゴリーで取り扱っています。又、日本では抗菌性飼料添加物の飼料への添加は配合飼料工場で行われ、抗菌性飼料添加剤の添加は農場で行われていますが、EUや米国では原則として配合飼料工場で行われています。さらに、日本では、抗菌性の飼料添加剤の使用は、疾病を発症した動物を対象としているため、治療目的で最長7日間までの投与に限定されており、予防や疾病の制御を目的とした投与は原則的に禁止されていますが、EUでは治療や疾病の制御を目的とした比較的長期間の投与が認められていて、さらに米国では、これに発育促進目的も加えた用途がすべて盛り込まれています。

 

養豚現場の事情

近年は成績不振の原因も、昔見たいには単純ではなくなっている傾向があります。疾病面では、単純なバクテリアだけの関与ではなく、ウイルスや寄生虫なども絡んだ複合感染、飼料や飲水、設備面からも関与しやすいカビ、カビ毒の静かな汚染、疾病面以外では、人材自体の不足、人材がいたとしても教育自体の不足、産子数は増加傾向にあっても、そもそもそのキャパを飼養できるスペースがないため、様々な事故やトラブルに転じやすい、さらに糞尿処理量が増加することによる負担増、設備面の老朽化や人の老年化など、疾病面だけでなく、管理面、技術面、環境面にも見えない衰退が起こり始めています。又、飼料を運搬してくれる車輛運転手自体も不足していること、さらには運転手の老年化もあって、飼料運搬車へ飼料添加剤を投入する行為すらも嫌悪されていることも事例として出て来ています。

 

飼料添加剤を活用するポイント

養豚現場で使用する動物用医薬品は、飼料用添加剤、注射用薬剤、飲水用薬剤の3つに分けられ、管理獣医師監修のもと、農場毎の状況で、その使用方法は異なっていると思います。対処すべき原因(理由)をしっかりと共有認識し、無駄な敵視で無駄な時間を費やすことなく、費用対効果を念頭に、無駄なく、有効的に活用する方法を見出すようにしていただきたいと思います。飼料添加剤の使用は決して悪い訳ではありませんし、農場の成績改善に役立つ有効的な活用方法は必ず存在します。

    ①正確な原因(理由)を確かめる。
    ②薬剤感受性検査の活用。
    ③現場臨床の詳細確認。
    ④農場で記録している様々なデータの確認。
    ⑤病性鑑定検査、薬剤感受性検査など、あらゆる角度から行った検査データの確認。
    ⑥未経産豚、繁殖母豚、授乳母豚、雄豚への薬剤選定とプラン。
    ⑦哺乳子豚への薬剤選定とプラン。
    ⑧子豚への薬剤選定とプラン。
    ⑨休薬期間は。
    ⑩薬剤価格は。
    ⑪添加量と濃度と梱包は使用しやすいか否か。
    ⑫水には溶けやすいか否か。
    ⑬薬剤同士の相乗効果は考慮しているか。
    ⑭薬剤同士の拮抗作用は考慮しているか。
    ⑮ターゲットのバクテリア毎に相性が良い薬剤、相性が悪い薬剤が存在することを理解しているか。

 

(株)食環境衛生研究所 菊池雄一

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