水の恩恵 2022年7月号

全国的に気温が上昇し、各地域で夏日、真夏日を記録しています。今年も暑い夏がやって来ました。暑熱が影響する繁殖成績、生産成績の低迷は毎年の課題となっていますが、その背景には必ず水周りのトラブルが存在しています。

養豚で活用される水は、飲み水としての水、洗浄としての水、消毒としての水、細霧や散水などの水、クーリング・パドなどの水、浄化槽調整で使用する水など様々ありますが、その中でも飲み水としての水は生命の源であり、生命維持、免疫向上、成績向上、消化率向上、胃腸の健常にとって、とても重要な位置を占めています。まさしく、「水を制するものは養豚を制する」、「病は胃腸から」と言ってもいいでしょう。比較的余裕のある水源と、きれいな水質がある農場では、確かに繁殖成績、出荷成績は安定しています。

飼料にも目を向けると、昨今の飼料価格を取り巻く環境はとても酷いものがあります。飼料価格が高騰する中、如何にして飼料要求率を改善するか、無駄になっている飼料を減らせるかはとても重要であり、特に飼料銘柄や購入価格、給餌器やその調整方法に至るまで見直しを行っている農場は多いと思います。

以前、水にまつわる話を記載させて戴いたことがあります。養豚業は水商売であること、全ての動物は水が生命の源であること、飼料と水には密接な関係であることなどです。さて、少し質問になりますが、皆さんの農場で使用されている水の量は豊富ですか?良い水ですか?目詰まりや汚れなどはありませんか?

農場で使用する水の量は、年々増加する傾向があります。それに伴って尿の処理量も増加傾向にあります。伝染病や疾病対策での洗浄と消毒回数の強化、豚舎の増改築や在庫頭数の増加による飲水量の増加などもその要因となっていると思われますが、豚が病気に掛かることなく健やかに成長し、出来るだけ早い日齢と目標枝重量で出荷が可能となるためには、飼料と同様にこの水の存在は大きいものとなります。特に水の汚れや不足は、様々なトラブルをもたらし、事故の誘発、成長の悪化、食下量の低下、飼料要求率の低下などを誘発しますので注意が必要です。

必要な水の量は増加する一方で、使用出来る水の使用量が増えているかと言えば決してそうでもありません。慢性的に水が不足している農場、水源の水量や水質などが天候に応じて変化してしまう農場も多々存在すると思います。普段から水周りに関心があり、常にチェックしている農場とそうでない農場では明らかに成績格差が生まれています。サーコウイルス、PRRSウイルスなどに悩まされている農場でも、実際の大きな原因は、水や飼料にあった農場も少なくはありません。水源の状態(井戸の状態、沢の状態、周囲の草や雑草、汚れなど)、農場で実際に使用出来る水の総量、水質、洗浄水と飲水の配管が同じなのか異なるのか、水圧は高過ぎないか低すぎないかなど、農場の水周りの状況はしっかりと把握するようにしてください。まずは“水”にも気に掛けることから始めましょう。

 

㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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