サーコワクチンを取り巻く状況。 2022年6月号

現在、単体ワクチンや混合ワクチンなど、複数社からサーコウイルスワクチンは販売されています。養豚業界に多大な影響を与えてきたサーコウイルスの被害は、このワクチンの出現によって明らかに沈静化へと向かっていました。又、ワクチンの使用方法も様々であり、子豚へ1回のみ接種している農場、子豚へ2回接種している農場、子豚へ3回接種している農場、母豚へ接種を行っている農場など、使用しているメーカーや接種日齢なども考慮すると、そのワクチンプログラムは多岐に亘っています。
しかし、この頃はこの状況に少し変化が見られています。サーコワクチンは接種しているのに『事故が増えてきた』『ひねや衰弱子豚が増えてきた』『子豚舎の状態が悪化してきた』『肥育舎の状態が悪化してきた』『出荷日齢が思うように縮まらない』など、抑えられていたはずのサーコ関連の症状が様々な形態で再燃してきています。抗体検査やリアルタイムPCR検査でも、今までとは違った変化も見られていることは確かな様です。では、この状況は本当にサーコウイルスだけが原因しているのでしょうか?
一連の被害が増加し始めている農場では、疾病的にはサーコだけではなく、PRRS、マイコプラズマ、連鎖球菌、グレーサー、病原性大腸菌、サルモネラ、すす病、ローソニア、Appなどの関与と、今までとは異なる免疫の乱れも確認されています。明らかにサーコだけでの問題ではないことを示唆しています。
 
さらに、気になる点が3つほどあります。1つは種豚管理(更新、損耗、栄養不良、泌乳低下、分娩時間の延長など)、1つは飼料管理(成分内容、給餌量、給餌回数、給餌器など)、1つは水周りの管理(水源、水量、水質、水圧など)です。つまりは、以前と比べて、明らかな母豚の免疫力や体力の低下、飼料管理の不備、水周り管理の不備が見られるようになっています。
サーコワクチンの効果を妨げる理由が農場側にあるとすれば、そこの改善は急務となります。サーコワクチンはだれもが認める優秀なワクチンです。しかし、それだけで今の疾病状況全てを解決する力はありません。価格も決して安くは無いワクチンですので、本当の課題と原因を探るようにして見てください。
 
・種豚群、哺乳子豚、子豚のサーコの浸潤状況を確認。母子感染の確認。
・種豚群、哺乳子豚、子豚のPRRSの浸潤状況を確認。母子感染の確認。
・種豚群へのサーコワクチン接種の有無を確認。
・子豚のサーコワクチン接種時期や接種方法を確認。
・種豚群、子豚群へのPRRS対策を確認。
・ワクチン接種前の移行抗体の存在を確認。
・ワクチン接種前の子豚の体調を確認。
・問題ステージの疾病状況を確認。サーコ、PRRS以外の疾病関与を確認。
・母豚の体調、栄養、泌乳量、お産状況、損耗などを再確認。
・飼料周りの管理を再確認。
・水周りの管理を再確認。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。

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