今だからこそ見直せること、見直すべきこと 2022年4月号

全ての商品価格が高騰し、経営に大きく影響している状態が続いています。本来であれば明るいイメージの春ですが、新型コロナウイルス、ウクライナとロシアの戦争、物価上昇、円安などが重なりとても憂鬱な春になってしまっているのが非常に残念に思います。この状況下では儲けをだすことは難しいと思いますが、この状態だからこそ前向きに、今行えることに最善を尽くしている農場も存在します。
今回は、今の状態だからこそ見直すきっかけとなる項目を列挙(順不同)したいと思います。皆さんの事業規模、立地環境、経営状況などは各々異なりますので、お役に立てる情報かはいささか不明ですが、参考になれば幸いです。
①薬剤。
飼料添加剤、飲水用薬剤、注射用薬剤別に整理。費用対効果を主軸に目的と効果に応じた適正使用を再考する。ここは将来的にも価格が安くなることが考えにくいのでなるべく薬剤には頼らない経営を目指す。薬剤の使用量を減らす別テーマとして、熱源機器の使用頻度を減らすチャレンジ、肥育舎での換気量をアップさせるチャレンジ(ただし、排気量だけではだめ、入気量も重要)も実施。チャレンジについては見える化をしながら行うこと。必ず結果が検証できるようにすること。
②ワクチン。
価格だけに捉われないこと。ワクチンは治療効果ではなく予防効果なのでしっかりとした費用対効果で判断する。
③機能性資材。(薬剤以外の資材)
要求率改善、成長促進改善、繁殖成績改善、消化器系改善などその目的に応じて使用を行う。費用対効果が最も大事な項目だがそこが最も解りづらい項目。農場で使用している水と飼料がポイント。使用している飼料の骨格をしっかりと見直すこと。使用している水の量、圧、水質をしっかりと把握すること。この2つの基本をしっかりさせてから採用を考えること。
④熱源機器。
分娩舎、子豚舎、肥育舎、繁殖舎、育成舎、隔離舎など、各ステージの保温目的で暖房機器を使用している農場は多い。種類も豊富でコルツヒーター、ランプヒーター、ガスヒーター、ガスブルーダー、パンヒーター、ガソリックブルーダー、床暖房など多岐。この熱源機器の使用頻度も如何に少なく出来るか考えることは重要。熱源の無駄な使用による無駄な熱量は母豚の繁殖成績、子豚の要求率や増体などに大きく影響。電気代、ガス代、灯油代は飼料代金に比べれば微々たるものかも知れませんが、ここの見直しは全体成績の向上に繋がる大きなポイント。
⑤糞尿。
生産数がアップしても糞尿量が同じように増えては本末転倒。如何に無駄な糞、無駄な尿を減らせるか。飼料の形状(ペレット、クランブル、マッシュ)、素材の粒度(0.4mm以下、1.6mm以上を如何に少なく出来るか)、成分内容、給餌器設備、給水設備も見直すことで糞尿処理は変化する。処理というマイナスの発想ではなく、化成肥料を使用していた耕種農家にとってはありがたい国産堆肥、国産液肥を製造及び提供する部門として考えて取り組む。地域と環境を取り込むプラスの産業としての発想が大事。アグリ部門の立ち上げや地域の耕種農家との委託契約なども出来る。
⑥飼料。
自農場の条件に見合う飼料を選択することはとても重要。要求率の改善には使用している飼料の成分内容、ステージごとの切り替え時期、使用量、給餌器設備、給水器設備、水質などが重要。飼料形状や粒度も影響するポイント。要求率が改善する資材を販売するメーカーもある。
⑦人材と効率。
全ての作業項目で設備、動線、所要時間、所要人数などを再確認。何でも器用にこなすスーパーマン1人を作る指導と教育ではなく、連携力とチーム力を育てる。正確性は落とさずに1分でも・・3分でも・・10分でも・・と、業務に関わる時間を短縮させる。少ない人数でより多い仕事量をこなせるか考えさせる。自由な発想とアイデア。全ての作業に疑問を持ち、ゲーム感覚でスピードアップが出来る環境とチーム作り。人材確保への労働環境や待遇面の見直しも必要。
⑧修理、修繕、建築。
外部委託だけでは価格、納期、バイオセキュリティの課題などで難しくなってきている。自社で修理、修繕、建築のスペシャリストを持つことは大きな武器となる。又、建築資材高騰、納期延長などの心配も少なくなる。大きなメリットは壊れてからの修理、修繕ではなく、壊れにくい、使いやすくする修理、修繕が行えること。電気、溶接、修繕を行える年配の人材を雇用し、そこへ若いスタッフを貼り付けでタッグを組むことも出来る。又、地元の工務店とのさらなる連携の強化や自社のグループへ誘致すると言った発案も出来る。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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