養豚経営の課題に向き合う“見える化” 2022年3月号

畜肉相場が思った以上に上がらない中で、飼料価格の高騰は養豚経営にとって大きな難題となっています。又、人材の不足、建築資材の高騰、事故の増加や衛生費(ワクチン、薬剤)、追加の飼料費(ここでは飼料に添加する混合飼料や飼料添加資材など)の増加も頭を悩ませる事態になっています。しかし、この難局が予想される養豚業界に置いて、元気に、前向きに、やる気満々で成績(利益)を上げている農場も存在していることも事実となります。
 
活気がある・・、やる気がある・・、前向きである・・、この3つの思考は養豚業界に限らず全ての業界にとってとても重要なワードになると思います。しかし、これらは言葉で表すことはとても簡単ですが、実際に仕事現場で機能させるにはとても大きな壁もあると思います。養豚現場で実際に機能しているなと思える農場は1~2割ほどあればいい方なのかも知れません。
 

やってはいけないマイナス思考とは

飼料高騰、畜肉相場低迷の際についやってしまうマイナスな思考があります。下記に列挙するものはすぐには問題として表れないことが多く、もしかしたら“あれっ”と思うタイミングは半年後や一年後かも知れません。特に冬季時期での実行は要注意となります。思い当たる方は慎重に判断してください。
・導入豚、更新豚の削減。
・使用中の飼料ランクを下げる。
・ワクチンの使用を中止又は半ドーズなどドーズを減らす。
・単価だけでワクチンを選択する。
・とりあえず薬剤の使用添加濃度を下げる又は中止する。
・とりあえず飼料添加資材の添加濃度を下げる又は中止する。
・短絡的に従業員の賞与や報奨金や昇給を落とす。
 

現場が活気づく見える化とは

全体的に活気があり、前向きな農場に伺うと感じることがあります。当然ですが、前向きな農場でも不備、不平、不満などが全くない訳ではありませんし、どこの農場でも問題や課題は当然ですが抱えています。しかし、前向きな農場では農場の経営方針や実情、給与や賞与、報奨金などの制度に解りやすさが見られ、経営者がしっかりとした言葉やツールで皆に伝えています。つまり、従業員と経営陣とのコミュニケーションがとても活発であり、経営陣からの率先した挨拶、誉め言葉、会社の未来のこと、皆で行って欲しいことなど、具体的な言葉の激励、見える化した資料も存在しています。『興味、関心、協調、共感の4K』がしっかりと機能していているように感じます。解ってくれていると思っていたのに・・、やってくれていると思っていたのに・・などの言葉をよく耳にしますが、これは間違った考えです。人が唯一他の動物にはない武器は言葉です。人が使う言葉には大きな力があり、喜怒哀楽の様々な感情も存在します。その結果、気持ちとは裏腹な不用意な発言や、文章のみでの言葉では上手く伝わらないこともあり、不用意に人のやる気を無くすこと、士気を下げることもしばしばあります。しかし、その言葉の欠点と利点を熟知し、使いこなすことが出来ればどれだけ武器となれるでしょうか。言葉は発しないと効力はなく、またそれを伝える手段を考慮しないと意味を成しません。必要なのは“伝えた”ではなく、“伝わったか”となります。現在はモバイルツールの普及が盛んとなり伝え方の幅も広がっていますので、農場毎に合ったツールを選択することもいいと思います。養豚業はとても素晴らしい産業です。筆者の知り合いにも豚肉がおいしくない、食べないと言った食わず嫌いの子供がいましたが、筆者が揃えた豚肉を食べて貰うと大好きに変わり、とてもいい笑顔で食べていたのが印象的でした。『またこの豚さんが欲しい、また食べたい』と言ったことは最高の賛辞と思います。皆さんが一生懸命生産している豚肉は誰かを確実に笑顔にしています。この誇れる仕事を弊社も全力でサポートして盛り上げて行ければと思います。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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