マイコプラズマ・ハイオライニス 2022年2月号

皆さんが良く知っているマイコプラズマと言えば、Mhp(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)になると思います。Mhpは近年、全国的にやや増加傾向にもありますが、メーカー各社から販売されているワクチンの使用もあって、大きな問題に転じることは少なくなっています。しかし、その陰でここ数年話や相談が多くなったことがあります。事例としては、事故にはあまり転じないのに咳が目立っている・・、関節炎や跛行が目立つ・・、薬剤の効果がイマイチに感じる・・、発育や枝重量が抑えられている感じがする・・、突然死が・・、神経症状が・・、この今までとは異なる雰囲気に大きく関与している可能性があるのが、今回お話をするマイコプラズマ・ハイオライニスとなります。
マイコプラズマ・ハイオライニス・・と言ってもあまり聞きなれていない方もいると思います。ハイオライニスはワクチンではお馴染みのハイオニューモニエとは別のマイコプラズマとなり、決してここ最近になって見られた新しい疾病ではありません。昔から存在していて、表舞台に出やすい疾病群と関与しながら農場の成績を蝕むことが知られています。
 

ハイオライニスによる多発性漿膜炎と関節炎

ハイオライニスは正常豚の鼻腔内に30~60%は存在していると言われています。しかし、鼻腔内に存在する割合については、年齢によって異なり、一年以内の豚では約80%、一年以上の豚ではその分離割合は約30%と言われています。この状況をもう少し解説すると、幼若豚の鼻腔内にはきわめて高率に本菌が存在しているのにも関わらず、ハイオライニスの発生は極めて散発であることも解っています。しかし、近年このマイコプラズマ・ハイオライニスは確実に増加傾向にあると考えられ、気が付かない内に農場を汚染、蔓延させてしまう危険もあります。
皆さんの農場でも中々咳が直らない、咳が増えた、関節炎も見られる、発育がイマイチ、グレーサーや連鎖球菌だと思って対応したがイマイチ反応がないなど、気になっている症状、今までの対応で治癒しきれない症状などがあるようならもしかすると、根っこの部分でこのマイコプラズマ・ハイオライニスが関与していることも考えられます。特に連鎖球菌だと思っていたら実はハイオライニスも絡んでいたと言った事例は多くなっています。今現在販売されているマイコプラズマワクチンも、ハイオニューモニエに対するワクチンであり、今回のハイオライニスにはMhpのワクチンだけでは対応が不十分であることも示唆されています。又、ハイオライニスが増加傾向にある背景には、萎縮性鼻炎(ボルデテラ)、パスツレラ、ハイオニューモニエ、PRRSなどの疾病群が関与することも知られています。これら疾病群により鼻粘膜や肺の上皮細胞に関与することで、損傷を与え、血流に入り込み、多発性漿膜炎や関節炎症状を引き起こすことも懸念されます。
 

対応について

ハイオライニスと絡んでいる疾病群によってもその対応は分かれますが、ハイオライニスの存在をしっかりと確認することが重要となります。全国的に見ても血液抗体検査を実施されている農場は結構多いと思います。しかし、この血液抗体検査だけではハイオライニスの存在には辿り着けません。ハイオライニスの存在は病性鑑定検査で明らかにすることが出来ます。又、ハイオライニスに対する有効的な薬剤は存在します。しかし、薬剤を使ったから改善したと言った単純な疾病ではないことも周知の事実となり、選択した薬剤をその農場毎に合った時期とステージで投薬プログラムを組むことで緩和まで導くことが出来ます。AR、パスツレラ、連鎖球菌、グレーサー、浮腫病、PRRSなど・・、絡みやすい疾病群との関係もしっかりと確認、対策してから取り組むようにしてください。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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