冬季に要注意 農場を悩ますヘモフィルスとインフルエンザ 2021年12月号

養豚で肺炎と言えばやはり胸膜性肺炎(App)を思い浮かべます。胸膜性肺炎(App)は、分離される型(1~15型まで存在)や保有する毒素に応じてその病原性は千差万別であり、農場の管理状況や環境に応じても、不顕性で経過することもあるし、慢性~急性の病状を辿ることもあります。又、シーズンに入ると注目を集める疾病の1つとして、インフルエンザも挙げられます。しかし、インフルエンザについては、結構気にして対応している農場、気にはしているが対応までは行っていない農場、まったく気にしていない農場など、その意識は様々です。又、インフルエンザについては、シーズン性があるとは言え、一年中関与するウイルスでもありますので注意することは必要であり、インフルエンザは単体感染では大きな悪さはしないことも多いのですが、マイコプラズマ、サーコ、PRRSを始め、胸膜性肺炎(App)などの呼吸器系疾患との混合感染下では、その病原性や被害は増加します。
あまり気にならない?気にしていない?インフルエンザや、新しい病気の浸潤や情報などが溢れかえる中で、昔ながらあるものと言った意識になり始めている胸膜性肺炎(App)の存在が少し危機感を感じさせます。
さて、ここから少し胸膜性肺炎(App)、インフルエンザの対応について少しお話をします。まず、胸膜性肺炎(App)ですが、農場毎の発生ステージと状況に応じて細かい対応は分かれますが、ワクチンは市販されていますので、まずはワクチンを使用する方法(しかし、ここ最近はCSFワクチン接種の開始地域にて、胸膜性肺炎(App)ワクチンの接種時期やコストに悩んだ相談も多くなっています)、細菌性の疾患なので効果のある薬剤を使用する方法があります。又、対処療法以外であれば、換気(空気)の状態が悪い農場、遅延離乳や分娩舎を離乳子豚舎として長めに使用している農場などは、胸膜性肺炎(App)が発生するリスクが高まることが知られています。よく、寒さ=肺炎と考えている農場が多く存在しますが、決してそうではありません。寒さではなく寒暖差、乾燥よりは湿潤、過換気よりは換気不足、新鮮空気が滞った農場に反応しやすい傾向があります。
インフルエンザについては、胸膜性肺炎(App)と同じでワクチンが販売されています。胸膜性肺炎(App)のワクチンとインフルエンザのワクチンを両方使用している農場もいないとは言えませんが、対応を組まれている農場では、基本的にはどちらかを選択して使用していることが多いと思います。インフルエンザはウイルスの疾患であり、湿度が50%以下に落ち込むとその病原性は高くなります。そして薬剤の効果は期待が出来ません。カラスや野鳥の侵入を防ぐ防鳥ネットの管理や、舎内の飼養密度や空気密度(換気面)の改善、空間消毒や乾燥を防ぎ適度な湿度を保つ細霧などの環境整備も必要になります。意外なところですが、胸膜性肺炎(App)もインフルエンザも、ガスヒーター、ジェットヒーターなどの熱源機器の使用が過多気味の農場では、その発生が増加する傾向があります。併せて注意して見てください。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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