母子感染と移行抗体と母豚の損耗 2021年11月号

近年、農場で増えている問題や事故の殆どが、母子感染を主軸として発生しやすい疾病で占めています。母子感染が増加している背景には、繁殖成績、分娩成績の向上、種豚群での疾病感染の増加、野外感染抗体価の増加があり、豚熱(CSF)による種豚や精液の選択先の変更なども微妙に絡み合って、農場で使用するPS雌豚や雄豚、GP雌豚や雄豚、GP精液やPS精液などの系統、購入先、購入ロット、購入ローテーションなどの急な変更、思うように管理出来ていない自家育成なども、同時に足を引っ張っている状態となっています。
とても厄介なことですが、種豚群はこの手の臨床的な症状はあまり表へは出しません。でも、そこには注目すべきポイントは存在し、良く見ると予期できるサインは出しています。しかし、そのサインのほとんどに気が付かず、後手に転じてしまい、最終的な生産成績が出るまで問題視することが出来ない状態となっています。
又、近年は産子数の増加などもあり、繁殖成績のみが著しくアップしている農場が多くなっています。例えば、産子数の増加は生時体重の低下、生時子豚のばらつき、虚弱の増加を生む危険性もあり、お産に関わる時間や疲労も今までとは明らかに異なっています。分娩の平準化が出来ていない農場ではさらに負の連鎖が加速することにもなり、種豚群の繁殖成績は良くなっているにも関わらず、母豚の疲労や疲弊を助長し、母子感染へと促すことにも繋がっています。
以下に、増加傾向にある母子感染と、ワクチンが市販されている場合、その効果が以前とは異なって弱くなった?と感じているものを列挙します。皆さんの農場では大丈夫ですか?もし気になる症状が見られる場合や、少しでも疑問に感じている場合は、血液抗体検査、病性鑑定検査、栄養検査、生化学検査などを用いて確認して戴ければと思います。
・マイコプラズマ(ハイオニューモニエ、ハイオライニス)
・サーコ2型
・PRRS
・浮腫病(Stx2e)
・連鎖球菌(suis2)
・ローソニア・イントラセルラリス
・スス病
・グレーサー
・ヘモフィルス
・その他
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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