農場を未だに悩ましているマイコプラズマとサーコウイルス 2021年10月号

マイコプラズマとサーコウイルスのワクチンはメーカー各社から販売されています。養豚業界にとって、このマイコプラズマワクチン、サーコウイルスワクチンの開発と販売はまさに救世主的な存在であり、今現在でもその必要性は高い状態を維持しています。
現在販売されているマイコプラズマワクチン、サーコウイルスワクチンは単味ワクチン、混合ワクチン共にその種類は多く、メーカー毎に特徴を別にした製品内容で、皆さんの農場でもいずれかのメーカーの製品をお使いのことと思います。
さて、本題に入りましょう。ここ数年で目立って来た事ですが、今までは抑えられていたはずのマイコプラズ様の症状、サーコウイルス様の症状、咳や肺炎、発育停滞などが何故か増加傾向にあると、弊社に相談される回数が増えて来ていました。農場現場では今何が起こっているのでしょうか。
相談があった農場では、肺炎症状を始め、痩せ、ひね、死亡などが増加している状況があります。その原因は多々あるとは思いますが、検査機関として気になる状況が1つありました。それは、種豚群でのマイコプラズマ野外感染とサーコウイルス野外感染の増加です。そもそもマイコプラズマもサーコウイルスも、野外感染自体はすでに受けていることが多いのですが、その野外感染抗体価が、今までと比べても高くなっている傾向があり、移行抗体価のバラツキや延長、母子感染の引き金になっている可能性があります。
農場で選択されている各種ワクチンは、メーカーによってその特徴は異なり、ワクチン接種の時期や手法などにも注意しなくてはいけない点が存在します。実際に、採用されているワクチンの性能を十分発揮させることが出来ないのでは?と思われる接種日齢や接種方法を取っていた農場もありました。マイコプラズマワクチン、サーコウイルスワクチンを使用しているのに、今までとは違う農場の異変に戸惑っている農場は、今一度再確認されるようにお勧めします。
少しイレギュラーな話になりますが、ここ数年、マイコプラズマワクチンを使用していない農場もちらほら存在して来ています。戦略的に使用をしていない農場、新規農場でスタートしたから必要性を感じていない農場など、その理由は様々と思います。又、薬剤耐性(AMR)対策の一環で、種豚群や子豚群などへ、飼料添加剤などの薬剤使用を控えている農場も結構多いのではと思います。マイコプラズマワクチンの未使用自体があまり関係していない件にはなりますが、少し気になる件として、マイコプラズマワクチンを長年使用している農場でも、マイコプラズマ・ハイオライニスによる被害が増加している傾向があります。呼吸器病を主体としたマイコプラズマはマイコプラズマ・ハイオニューモニエであり、ワクチン株はこのハイオニューモニエを使用しています。マイコプラズマ・ハイオライニスは足悪や関節炎症状に繋がる危険があり、現状のマイコプラズマワクチンだけでは効果は期待できません。ここはやはり川上管理である種豚群でのコントロールも必要となります。
湿度が異常に高かった暑熱の夏季は通り過ぎ、寒暖差が激しい秋季、寒さ厳しい冬季に季節は変わります。どの季節に移り替わろうとも、安定した呼吸器系疾患のコントロール、飼料効率を目指し、餌高の現状を打破して戴きたいと思います。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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