浮腫病ワクチンについて 2021年9月号

メーカー2社から浮腫病ワクチンが発売されました。ワクチン接種時期も1メーカーは2日齢~、もう一つのメーカーは4日齢~と接種しやすいワクチンとなっています。もう試されてその効果を実感されている農場もあるのではと思います。
さて、今回お話をする浮腫病ですが、農場毎によって様々な病態を取ることが解っています。被害日齢も、20日齢頃の分娩舎授乳期間中~肥育舎移動後まで幅広く、症状も眼瞼浮腫、神経症状、下痢、軟便、削痩、斜頸、食欲低下、発育停滞など多岐に渡り、様々な状態を呈し、典型例である眼瞼浮腫が見られない浮腫病も多く発生しています。
浮腫病は俗に管理病と称されることがあります。1つの大きな原因で発生するのではなく、複数の起因材料の中からの組み合わせで発病しやすいことが解っています。又、「うちの農場では浮腫病はないよ、見たこともないし」と言ったことも良く耳にします。でも浮腫病を引き起こす病原性大腸菌はどの農場でも浸潤している大腸菌であり、その殆どは不顕性で症状が表に現れることなく出荷まで到達します。浮腫病が発生してしまう農場では、この不顕性状態のバランスが乱れることが解っており、その原因については、日々行っている管理面、環境面が大きく関与することも指摘されています。
又、浮腫病の対応資材は決してワクチンだけではありません。様々な機能性資材(サプリメント系)、飲水消毒用資材など、メーカー毎に技術とノウハウを活かした対応が存在しています。これら、様々存在する対応の中から、自農場の状況に合った資材や対応を組めるのかもポイントになっています。
最後になりますが、浮腫病は完全に敵と見なして陰性化を目指すと痛い目に合います。浮腫病は単純な疾病ではありません。農場毎の発生機序を皆でしっかりと共有し、上手くコントロールすることが大事になります。今回、発売になった浮腫病ワクチンは、浮腫病と上手く付き合うための1つのツールとして、かなり期待できるのでは?と個人的には期待しています。今後も、現場の声に真摯に耳を傾けし、皆様へさらなる情報や技術提供が出来ればと思います。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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