今だからこそ考える引き算管理のすすめ 2021年7月号

飼料の高騰や建材費の高騰、慢性的な人材不足はこの業界にとって纏わりついている課題だと思います。又、これら課題にCSFの問題も重なり、種豚及び精液選択の変更やワクチン接種代金の負担増など、農場側の経営負担も増してきている状態です。弊社ではここ数年の養豚現場事情を踏まえて、足し算で邁進して来た作業や管理から、効果は維持向上させながらなるべく手間を省ける引き算の管理を薦めてきました。足し算管理、引き算管理などの言葉は弊社で使用している1つのコンサル用語ですので初めて耳にした人も多いと思います。
足し算管理とは、簡単に言えば毎回行うべき作業や管理が元々多いのにも関わらず、何かしらの問題や課題があった時点でさらに追加となる製品や作業や管理などになります。当然ですが、足し算管理は農場毎に問題や課題があるからこそ追加で思案した件を行おうとする行為となるのですが、そこには大きな落とし穴があります。どんなにシステムや機械化が進んでも人がそこに関わっていくことには変わりがありません。でも人には限界がありますので、どこかで些細なミスや空回り、抜けている箇所などの歪が生じることが多く見られます。農場の成績や従業員とのコミュニケーションがどこか空回りしていると言った現象が見られた場合は、この足し算管理側に陥っているのかも知れません。
お薦めする引き算管理は、この足し算管理側の製品、作業、管理などの考え方を少し立ち止まって見直すことから始まります。具体的には農場毎で改善出来る部分が異なりますのでここで明確に記載出来ることではありませんが、気が付かなかった・・どの農場でも行っていると思っていた・・今まで考えなかった・・と言った言葉が出るくらいに、目から鱗な改善(使用製品の効率化、作業や管理の時短と負担減、些細なポイントの提案)が可能となり、少ない人員数でも効率の良い農場運営を目指す考え方となります。
前述した資料や建材費の高騰や、クラスター事業による増頭や多産系種豚での繁殖成績アップによる在庫頭数の増加、糞尿処理量の増加、虚弱子豚や小子豚の増加など、課題は山積みですが、そこに抗うのではなく、そこを許容してから見直す着眼点が今は必要だと感じています。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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