豚丹毒の発生事例と注意点 2021年6月号

豚丹毒 (とんたんどく、英: swine erysipelas)は、豚丹毒菌の感染によって起こる人獣共通感染症です。好発時期は特に指定されてはいませんが、弊社の経験から推察すると2月~10月までは要注意な時期となります。豚における症状は敗血症型、蕁麻疹型、関節炎型及び心内膜炎型に分類され、豚やイノシシの他、人を含む哺乳類、鳥類にも感染することが知られています。ちなみにですが、人に罹る豚丹毒は類丹毒と呼ばれています。日本では家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されており、と畜場法において全部廃棄の対象となります。
さて、いきなり豚丹毒について説明をさせて戴きましたが、これには少し理由があります。近年、ワクチン接種を行っている農場(特に母豚に不活化ワクチン、子豚に生ワクチンを使用している農場)で、豚丹毒の発生が目立っています。今回、1つの事例として発生した農場の状況をご説明したいと思います。思い当たる方は参考にして戴けると幸いです。

概要

① 飼養規模は600頭一貫経営。
② 農場成績は良好。離乳頭数、離乳体重、出荷日齢、要求率、出荷枝肉重量、年間出荷頭数、離乳後事故率共に優良農場。
③ ワクチンプログラムは、未経産豚は交配前に2回、母豚と雄豚は年2回以上、不活化ワクチンを接種。子豚は60日齢頃に生ワクチンを接種。
④ 状況として、農場内での特記した豚丹毒の症状は無し。正常に出荷された体型の良い出荷豚で関節炎の炎症による廃棄が発生。移行抗体価を確認したところ60日齢までは移行抗体価が持続していることが判明。

選択出来る対応

① 子豚の生ワクチンの接種時期を70~80日齢へずらす。
② 子豚の選択ワクチンを不活化ワクチンに変更する。
③ ①②共に難しい農場ではこれ以外の対応で取り組む必要があります。
※ここは農場によって発生原因が異なることもありますので要相談となり
ます。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一

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