病原性大腸菌感染症(浮腫病)について 2021年4月号

今年、新しいワクチンの情報として、浮腫病対策用のワクチンが販売されようとしています。浮腫病とは、Stx2e(ベロ毒素)の関与で引き起こされる疾病であり、別名称では管理病とも言われるとても厄介な疾病となります。
 
管理病と言われる所以については諸所あるのですが、結構綺麗な農場で・・、手間暇掛けている農場で・・、製品及びワクチンなどの使用頻度が高い農場で・・、ウインドレスなどの設備が良い農場で・・、疾病が出やすい環境の農場でその発病が見られる頻度よりも、離乳体重が大きい、離乳日数が長め、良く飼料を食い込む、食欲は旺盛、給餌器管理が絶妙に上手いなど、比較的優秀と言われる農場や、以前から見ると調子が良くなって来た矢先の農場などでも、発生する頻度が高くなる傾向があります。何故この農場で?何故うちの農場で?何故急に治まったり、急に再発生したりを繰り返すの?など、その発生機序は結構複雑であり、1つの決まった原因で発病するような単純な疾病ではないことも厄介さの原因となっています。
 
浮腫病の発生には様々な起因材料があると言われています。10の農場でその発病があれば、10の農場共にその原因と対応が微妙に異なり、頭を悩ます原因にもなっています。又、浮腫病は本来、離乳前後の子豚で多く見られた症状なのですが、近年は子豚舎の後半時期、肥育舎時期にまでその事故発生の場を広げています。発生が無い又は見たことがない農場もあるとは思いますが、ひとたび発生が見られた農場は、事故頭数の増加、神経症状や発育停滞など、経済的にも相当の被害が報告されています。
ワクチンが販売されれば新しい対応の武器が1つ加わることになります。全国的な対策の1つの製剤としては炭酸亜鉛を、有機酸を、生菌剤をなど、色々使用はされていますが、100%の答えを持っているわけではないのが難しい所と思います。様々な製剤の利用の組み合わせと同時に、飼料管理、飲水管理、空調管理、移動方法、群編成なども絡むことがありますので、管理病と言われる所以は何なのかも農場側で良く話し合って見てください。思ってもいなかったところに落とし穴があったり、改善策があったりすることもあります。
弊社では今年の2月に開発していた浮腫病の血液抗体検査が完成し、Stx2eエライザ検査として農場ごとの浸潤状況を数値化して判断することが可能となりました。これによって、今までは困難であった浮腫病の汚染レベルと対応後の改善状況の把握が数値として可視化出来るようにもなりました。弊社では皆さまの農場のさらなる成績向上にお役立て戴くために、今後も様々な情報や診断方法を提供して行きたいと思います。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。

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