ワクチン接種の盲点 2021年3月号

今日もどこかでワクチン接種業務が行われていると思いますが、皆さんが結構なコストや時間を掛けて、人や豚達も大変な思いをして接種しているワクチンがもし『無駄になっている・・』『効果が出ていない・・』 などの問題を抱えていたらどうしたらいいのでしょうか。
効果が見えないことも大変なのですが、一部では出荷後の枝肉部位の炎症や変色などの問題が残り、食肉加工業者や販売業者などに多大な迷惑を掛けることにも繋がっています。この話題は以前から存在し結構な頻度で見受けられます。これはとても勿体ない状況です。
さて少し話題が変わりますが、皆さんは製品効果、現場効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか。製品効果とは、メーカーが苦労して開発し、厳しい審査にも合格して世に出たワクチンは製品自体の効果は100%あることを意味します。次に現場効果とは、その製品効果100%の製品が世に出て皆さんが使用する状態になったときに、様々な条件が重なって製品効果を減少させてしまうこと(現場自体で発揮出来る効果の割合)を示す言葉となります。このことを良く踏まえて言われる言葉があります。『製品効果100%の商品を現場で使用すると現場効果は60%にまで下がる』です。では、このマイナス40%分をどう補えば良いのでしょうか。
ワクチンはその製品能力だけ(ただ接種しただけ)ではその効果はフルには発揮出来ません。したがって、農場の現状と目的に見合ったワクチン選択×ワクチン効果が発揮出来る環境コントロール×ワクチン効果が発揮出来る栄養コントロール×ワクチン効果が発揮出来る器具機材の選択とメンテナンス×ワクチン効果が発揮出来る手技と手法が重要となります。この1つ1つの項目を10点満点として10×10×10×10×10で評価した100,000点がその農場での製品効果+現場効果の最大評価点数となります。是非皆さんの農場でも一度この考えに照らし合わせて判断して見てください。答えが出なかった疑問点や問題点の改善が出来るかも知れません。
 
【さらに細かいポイント】
① ワクチンの選択は良く考えて。
・豚の状態や施設環境や目的などで選択することがポイント。
② 健康面に留意。
・接種前後7日間は健康であること。
③ ワクチン接種前後の状況。
・前後3日間~7日間は栄養面と保温面を確保。
・ワクチン接種直後からの保温と栄養は重要。
④ 使用針の正しい選択。
・日齢、大きさに合わせた長さと太さ。
・ここが厳守出来ていないとワクチン効果が出ない。
・ここが厳守出来ていないと患部の腫れや変色が発生。
・ここが厳守出来ていないと残留痕、注射痕などになりやすい。
⑤ 正しい接種部位の選択。
・間違った部位に接種している場合も多い。
・ここが厳守出来ていないとワクチン効果が出ない。
・ここが厳守出来ていないと患部の腫れや変色が発生。
・ここが厳守出来ていないと残留痕、注射痕などになりやすい。
⑥ 連続注射器は毎回チェック。
・毎回のメンテナンスと確認が必要。
・思っている以上に1頭の接種量が少なくなりやすい。
⑦ 接種方法の再チェック。
・1人での接種は基本的にはお薦めしません。
・作用時間が長くなる接種方法もお薦め出来ません。
・子豚も人も走り回る接種方法もお薦めしません。
⑧ 移動を基点としたワクチン接種。
・その詳細も重要なポイント。
・移動前?
・移動時?
・移動後?
・豚舎内?
・トラック内?
・カート内?
・通路?
・移動に掛かる時間は?
・2サイト農場、3サイト農場などでは農場間が何㎞離れている?
・移動カート又は移動トラックは冬季と夏季で工夫している?
⑨ 農場毎のアレンジは慎重に。
・ワクチン毎の組み合わせも注意点が存在。
・同時接種、混合接種などはメーカーと良く話し合うことが重要。
⑩ ワクチンはワクチン単価で判断しない。
・どれだけの投資対効果、費用対効果かを再度確認。
・総合的な人件費や治療費の削減効果も視野。
 
㈱食環境衛生研究所 防疫班 家畜防疫グループ

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