効果が見えなくなった?ワクチンを取り巻く状況について 2023年10月号

夏季の暑熱の影響がいまだに強く残る中、九州地区では新たに豚熱のワクチン接種が開始されました。豚熱ワクチンについては、現場で新しく追加する作業となりますので、現場での作業スケジュールなど、まだ混乱が生じている農場もあるのではと思います。
今回は豚熱ワクチンの話ではないのですが、豚熱ワクチンが接種される時期に他の疾病の関与を受けてしまった又は、受けていた場合は、その時の子豚達にとっては結構なストレスになる可能性は否定できません。この頃受ける農場からの相談に、『今までは落ち着いていたサーコウイルス、PRRSウイルスが抑えられなくなった?』『ワクチンの効果が出にくくなった?』など、疑問や不安の声が多く聞かれるようになりました。さらに『この頃事故が増えてきた・・』『削痩する子豚が増えてきた・・』『薬剤の効果が見えなくなった・・』など、追随するような形で相談ごとが増えています。農場ではいったい何が起きているのでしょうか。
 

可能性として考えられるもの

①人員不足、激しい気象変化、作業の増加、管理不足などがもたらす弊害。
②思うようにいかない洗浄・消毒・空舎・オールイン・オールアウト。
③サーコウイルス2型。
④PRRS。
⑤マイコプラズマ。(ハイオニューモニエ、ハイオライニス)
⑥連鎖球菌、グレーサー、浮腫病、サルモネラ、パスツレラ、Appなど。
⑦カビ、カビ毒。
⑧種豚群の免疫状況の変化。(感染量及び保菌量の増加)
⑨母子感染の増加。
⑩総産子数は多いが生時体重が小さい、死産が多い、虚弱が多い。
⑪ワクチン接種時期の体重が小さい、子豚に活力がない、下痢や軟便などの消化器不良が見られる。
否定と確認
①検査と調査。そもそもの原因はサーコウイルスですか?PRRSウイルスですか?疾病ですか?飼料ですか?水ですか?管理・環境ですか?他に原因はありませんか?
②再確認が必要な事項。選択しているワクチンの種類、接種ステージと日齢、接種方法、接種人数、接種に関わる総時間など。
 
確かに、今までは抑えられていたはずのサーコウイルスワクチンの恩恵に少し変化が出ていることは確かと思います。でも、この状況だからこそ一喜一憂せずにしっかりと原因を確かめていく必要もあると思います。サーコウイルスのワクチンは優秀であることは間違いありませんが、優秀だからこそ自農場の状態に見合ったワクチンの選択と組み合わせも重要なポイントになって来ます。さらに、マイコプラズマの浸潤も見過ごせない状況になっていますので、マイコプラズマワクチン及びマイコプラズマに対する総合的な対策についても、今一度確認して見ることをお薦めします。又、PRRSワクチンを使用している農場では、PRRSワクチンのプログラムやその他の対応など、総合的なPRRS対策についても同様に確認して見てください。確認後に少しでも気になったことがあれば、やはり検査と調査をしっかりと実施していく必要があります。筆者も経験したことですが、大きなことを問題視する前に小さき疑問に目を向ける姿勢が必要なことも多々ありました。もしかしたら気が付けなかった意外な原因が解るかも知れません。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一。
 
 

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