PRRSとサーコウイルス2型と細菌疾病 2023年12月号

近年、いままでは抑えられていたPRRSやサーコウイルス2型による被害の報告をよく耳にします。関与しているウイルス疾病はPRRSやサーコウイルス2型、それと同時に連鎖球菌、App(アクチノバチラス:通称ヘモフィルス)、パスツレラ、豚丹毒、サルモネラ、グレーサー、マイコプラズマハイオライニス、マイコプラズマハイオニューモニエなど、その農場毎、地域毎の特徴を反映して、農場内に溜まっていた?感染源が元々あった?他から引き込んだ?細菌関連疾病の同時感染も起こっているようです。
 
この光景はPEDが発生した数年間でも起こっていた状況と少し似ています。PED発生時期もそうでしたが、今でも下記のような状況に悩まされている農場は少なくないのではと思います。
 
①思うような種豚の選択、更新、廃用が出来ずに更新計画が大きく乱れた。
②肥育豚からの更新豚が増加した。
③従業員の減少によってワクチン接種を行う人員が削減された。(1人でのワクチン接種)
④人員不足によりワクチン接種に関わる時間(ワクチン作業を行う総時間)も長くなった。
⑤今までとは異なるワクチン接種時期に変更した。(早すぎる接種、離乳後や子豚舎で行う接種)
⑥コストを考慮してワクチンの中止又はワクチンを変更した。
 
さらに、今回の状況を助長している追加の要因としては、豚熱ワクチンの追加による影響(追加ワクチンのストレス、細菌疾病が関与しやすい時期での接種、他のワクチン免疫の抑制?)、コスト高によるプログラムの変更(ワクチンや薬剤使用の低減又は中止)も引き金になっている可能性があります。特に豚丹毒については、豚熱ワクチン接種後に中止される生産者も珍しくはありませんので注意は必要と思います。
 
撲滅できるようで難しいのがPRRS、サーコウイルス2型となっています。どちらも単独での感染であっても厄介なのですが、同時に感染したりするとその病原性はさらに増加します。又、そこへは必ず細菌疾病が絡むことも事実ですので油断が出来ない状態となっています。
 
対策としては、まずは臨床状況確認と検査で、農場で起きていることの新の理由と原因を突き止めることが必要となります。そこで得られた問題点から課題を抽出し、皆で共有して同じ目線で対応することが必要となります。
 
①事故や発育停滞が見られている時期を正確に把握し、そこに関わる作業、管理を見直す。
②関与している疾病群を病性鑑定検査や薬剤感受性検査で確認。関与している細菌疾病群には、効果のある薬剤を効果のある方法で使用する。
③サーコウイルス2型は、種豚群へワクチン接種を行っている農場では、ここのプログラムやワクチン選択を再確認する。子豚はワクチン接種を行っている時期、ドーズ(1頭当たりの接種量)、接種方法、使用製品など、今一度確認する。
④PRRSは言うまでもなく地域防疫が要。絶対に侵入させない防疫意識(バイオセキュリティ)はとても重要。しかし、侵入を許し、農場で暴れている状態であれば、まずはそれ以上増やさないこと、それ以上暴れさせないこと、沈静化を図ることが重要。まずは検査(ロープ法検査、血液検査、病性鑑定検査、PCR検査、シーケンス検査など)にてPRRSの感染時期と感染している株を確認。PRRSワクチンを使用していない又は、過去に使用していた農場では、使用及び再開を検討。使用している農場では、ワクチンプログラムやワクチンの手法など、今一度確認する。
 
(株)食環境衛生研究所 菊池雄一

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