萎縮性鼻炎(AR)
ARとは
病因:
Bordetella bronchiseptica(以下ボルデテラと示す)、Pasteurella multocida(以下パスツレラと示す)。
 ボルデテラはⅠ相、Ⅱ相、Ⅲ相、ラフ相の4つの株に分類され、病原性のあるⅠ相菌が主に分離される。
 パスツレラはA、B、D、E、Fの5つの血清型に型別され、豚は主にA型、D型が分離される。
 ボルデテラは豚の鼻腔に容易に定着(赤血球凝集素)して鼻粘膜に炎症を導き、産生される皮膚壊死毒(DNT)の作用により若齢豚の鼻甲介骨組成を阻害する。
 パスツレラは正常な鼻粘膜には定着せず、ボルデテラやアンモニア等の起因する粘膜の損傷により、定着が可能となる。
 毒素産生株の産生する毒素(Pm-DNT)はボルデテラの皮膚壊死毒に類似した毒素作用を有し、病変形性を加速させるとともに本病の症状を著しく悪化させる。
症状:
感染時の日齢が低いほど強い症状を発現する。
 生後間もない感染により、気管支肺炎を併発することがある。
 くしゃみ、鼻汁の排泄、鼻ずまり、流涙、アイパッチ、鼻出血、鼻曲がり(鼻甲介の萎縮)等の症状を有し、他の疾病との複合感染を引き起こし経済的にも被害が生じる。
対策:
その農場毎の症状に合った対策を行うことが必要です。
 (1)ワクチンプログラムによる予防
 ⇒使用されるワクチンの種類や農場の症状等により、実行するプログラムに違いがありますので注意して下さい。
 *ワクチンだけで農場から完全にARを撲滅できないが、Pm対策にはDNTトキソイドが極めて有効であると言われている。
 またBb対策としては、従来からBb死菌あるいは赤血球凝集素を含有するワクチンが販売されている。
 (2)薬剤による予防と治療:鼻腔内噴霧、注射、飼料投薬、飲水投薬等
 *感受性のある抗生剤投与が有効と考えられている。
 しかし、薬剤のみによるコントロールには限界があり、耐性菌の出現も問題となっているので注意が必要と思われる。
 (3)飼養管理、飼養環境等の改善
 ⇒乾燥状態、塵埃、アンモニア、ガス、損傷等の環境悪化により疾病が誘発され、症状が悪化します。
 (4)主に子豚の疾病ですが、種豚群の能力(免疫等)の安定化に向けたコントロールも必要です。
類似疾病検査:
- ・豚マイコプラズマ肺炎
 - ・豚インフルエンザ
 
剖検:
- ・腹鼻甲介、背鼻甲介の萎縮又は空洞化
 - ・鼻粘膜の水腫性肥厚、粘調性帯黄色滲出物、出血
 
細菌検査:
鼻腔スワブで腹鼻甲介、背鼻甲介の粘膜を採取する。
 Bordetella bronchisepticaは1%ブドウ糖加マッコンキー寒天で培養する。
 Pasteurella multocidaはS培地(sawataの培地)にて培養する。
 PCR検査
血清学的検査:
Bordetella bronchiseptica;凝集試験
 Pasteurella multocida;ELISA