豚胸膜肺炎(App)
豚胸膜性肺炎(App) は
病因:
Actinobacillus pleuropneumoniae(以下Appと示す)。
Appは今現在1型から15型までの血清型に型別され、5型についてはa、b、cに分類される。
本菌はApxⅠ、Ⅱ及びⅢと呼ばれる細胞毒素を産生し、強い病原性を示す。
日本での発生は2型が多く、次いで1型、5型が多いが3、7、11、12、15型等も分離されている。
Appの発生は不顕性感染、日和見感染的な要素が多く、環境の悪化やストレス等が引き金となり発生する。
しかし近年その病原性が増しており、慢性的な症状ばかりでなく、急性症状による突然死が増加している。
症状:
Appに感染した豚は免疫の程度、衛生環境、管理状態、感染時期と量等の要因により甚急性、急性、亜急性、慢性の臨床経過をとる。
甚急性、急性では突然の元気消失、食欲不振、脈拍数の著しい増加、40度以上の発熱、嘔吐、下痢、腹式呼吸、呼吸困難、吐血(鼻等)、チアノーゼ等の症状を示し、発病後1〜3日位で急性死する。
亜急性及び慢性は、湿性の発咳や食欲の減退等の症状が現れ、これによる発育不良等が認められる。
又、呼吸器症状ばかりでなく流死産等の繁殖障害の発生も起こることもある。
対策:
その農場毎の症状に合った対策を行うことが必要です。
(1)ワクチンプログラムによる予防。
⇒使用されるワクチンの種類や農場の症状等により、実行するプログラムに違いがありますので注意して下さい。
(2)薬剤による予防と治療:注射、飼料投薬、飲水投薬等。
(3)飼養管理、飼養環境等の改善。⇒過湿及び乾燥状態、塵埃、アンモニア、ガス、寒暖差、暑熱等の環境悪化により疾病が誘発され、症状が悪化します。
(4)種豚群の能力(免疫等)の安定化に向けたコントロールも必要です。
類似疾病:
・豚マイコプラズマ肺炎・豚パスツレラ症・豚インフルエンザ・トキソプラズマ病・豚肺虫症・ヘモフィルス パラスイス感染症・レンサ球菌症
剖検所見:
- ・肺胸膜の線維素付着、胸膜の癒着
- ・肺の充出血、水腫、暗色肝変化(割面のモザイク様)
- ・心嚢水、胸水の増量と混濁
- ・胸腔リンパ節の充出血、水腫
Appの病原因子と考えられている物質:
- ・夾膜(CP):白血球などの食菌作用に対する抵抗抗体や補体成分の菌体への結合を抑制する事により、液性免疫機構に対する抵抗
- ・内毒素(LPS):エンドトキシン活性豚の体内細胞への付着機能抗LPS抗体をブロッキング抗体として補体作用からの回避炎症性サイトカインの誘導
- ・外膜蛋白質(OMP):トランスフェリンに結合し、鉄分の接種に関与
- ・Apx毒素 :肺病変の形成溶血活性、白血球やマクロファージに対する溶解作用、食細胞によるH2O2放出の抑制
- ・線毛 :豚の体内細胞への付着
- ・赤血球凝集素 :豚の体内細胞への付着
- ・プロテアーゼ :豚の組織内蛋白の解裂、分解
- ・スーパーオキサイドディスミュターゼ:食細胞のファゴライソゾーム内での生存に関与
Appが生産する3種類の毒素の性状と血清型間の分布:
ApxⅠ:溶血活性(強)・細胞毒性(強)、1,5,9,10,11型
ApxⅡ:溶血活性(弱)・細胞毒性(強)、1,2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,15型
ApxⅢ:細胞毒性(強)、2,3,4,6,8,15型
OMP:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12型,15型
血清型別検査:
共凝集反応
間接赤血球凝集反応
寒天ゲル内沈降反応
抗体検査:
CF反応(型別)
凝集反応
ELISA法