見えないウイルスを味方に?Qβファージが支える安全な暮らし

「ウイルス」と聞くと、インフルエンザやコロナウイルスといった病気の原因となるウイルスを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。でも実は、人に害を及ぼさない“無害なウイルス”も存在します。
その一つが研究や製品評価の現場で活躍するバクテリオファージです。
7月に紹介した「MS2ファージ」に続き、今回はQβファージをご紹介します!
 

Qβファージとは?

QβファージはMS2ファージと同様に“細菌に感染するウイルス(ファージ)”の一種で、大腸菌に感染するRNAウイルスです。正式には「バクテリオファージQβ」と呼ばれます。直径は25~30nmほどで小さく、人には感染しないため安全に取り扱うことができます。
また、Qβファージはエンベローブを持たない構造をしており、「非エンベローブウイルス」に分類されます。非エンベローブウイルスは、アルコールや界面活性剤などの影響を受けにくいため、製品の抗ウイルス効果を評価する際の代替ウイルスとして「抗ウイルス性試験」に多く活用されています。
 

出典: https://www.zenyaku.co.jp/jyokinlabo/column/infection/003.html
 

抗ウイルス性試験と規格の存在

抗ウイルス性試験とは、素材や製品(マスク、フィルムなど)がウイルスをどの程度不活化(感染できない状態に)できるかを調べる試験です。製品とウイルスを一定時間反応させ、反応前と反応後でウイルス量を比較することで、抗ウイルス効果を評価します。
そんな抗ウイルス性試験は、公的な試験方法である“JIS規格(日本産業企画)”や“ISO規格(国際標準化機構)”に基づいて行います。
 

Qβファージを使用する試験規格

規格番号名称内容
JIS R 1706ファインセラミックス―光触媒材料の抗ウイルス性試験方法紫外線照射下で光触媒として効果を発揮する材料の抗ウイルス性試験の方法を定めた規格
JIS R 1756ファインセラミックス―可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法可視光に反応して光触媒としての効果を発揮する材料の抗ウイルス性試験の方法を定めた規格
※ISO 21702Measurement of antiviral activity on plastics and other non-porous surfacesプラスチック、金属、セラミックスなど、非多孔質の材料に施された材料の抗ウイルス性を評価するための試験方法を定めた規格

※ISO21702ではQβファージの明記がされていませんが、実際の運用では多く使用されています。
 

Qβファージが注目される理由

MS2ファージとQβファージには「大腸菌に感染するRNAウイルス」「人に感染しないため安全に取り扱える」「ノロウイルスの代替菌」等、共通点が多くあります。
では、なぜQβファージが「抗ウイルス性評価試験」で多く活用されているのでしょうか。
それは増殖効率の良さと安定性が高いことが大きな理由です。
 

特徴
①安定性が高い熱・pH・光などの環境の変化に強く、ウイルスの粒子が壊れにくい
→安定したデータが得やすい
②増殖効率が高い感染してからRNAを放出するまでが短く感染サイクルに早く移行できる
→短時間で十分量のウイルスが得られる
③粒子の均一性が高い大きさや形がそろっており、ばらつきが少ない
→安定した懸濁液の調製が可能なため、試験操作の再現性が高い

 
Qβファージは扱いやすいだけでなく、安全に安定した結果を得られることから、抗ウイルス性試験に大きく貢献しています。
Qβファージ指定の試験も、代替えウイルスとして検討中の試験も、お気軽にお問い合わせください。求める効果やご予算に応じて最適な試験内容をご提案いたします。
 

 
参考ページ:
>>除菌ラボ アルコール除菌では効きにくいウイルス・菌がある!? 次亜塩素酸ナトリウム除菌との併用のススメ
 
 

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