馬糞と牛糞、その違いとは?

先日、肥料分析のご依頼で「馬糞」と「牛糞」を扱う機会がありました。
私自身、馬糞を生で見たり触れたりするのは初めて。そこでまず驚いたのは―――
意外にも「臭くない」こと。牛糞のような強い発酵臭はほとんどなく、ほぼ無臭に近く大変驚きました。
この体験をきっかけに、馬糞と牛糞の違いについて改めて調べてみました。
 

馬と牛の生体の違い

  • 蹄:牛は偶蹄目で2つ、馬は奇蹄目で1つ。
  • 消化器官:牛は反芻動物で複数の胃を持ち、馬は単胃動物。
  • 運動能力:馬は高速移動に優れ、牛は傾斜地での移動が得意。
  • その他:革の厚さ(牛革は厚く丈夫、馬革は薄く柔らかい)
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    今回は排泄物(糞)の違いがテーマなので消化吸収について少し詳しく説明します。
     

    消化吸収の違い

    牛は反芻動物といわれ、一度飲み込んだ食物を胃から口の中に戻し、再び噛んでからまた飲み込みます。反芻動物は、胃袋が4つあり、前の3個の胃の中では数多くの微生物が存在しています。微生物が草などの繊維質成分を分解し発酵させることで、栄養分を体に吸収できる形にし、草などの繊維質が主なエネルギー源となります。
    一方、馬は単胃動物といわれ、食べ物を口で咀嚼し、胃で直接消化吸収を行い、主に糖をエネルギー源として利用します。
    馬の消化の過程では、牛ほど効率的に栄養を回収できないため、栄養素の多くが未消化のまま便として排出され、微生物が豊富になるという特徴があります。
     

    馬糞と牛糞、肥料としての違い

    馬と牛では消化機能が異なるため、牛が排出する糞は、既に発酵が進んでおり(発酵臭が強い)ゆっくりと分解されるため、長期的に土壌に養分を供給できます。
    一方、馬が排出する糞は発酵はあまり行われない(発酵臭は弱め)ため、有機物や微生物を多く含み、土壌の通気性、排水性、保水性、保肥力などを向上させる効果が高いとされています。
     

    まとめ

    牛糞は「じっくり効く肥料」、馬糞は「土を元気にする改良材」といったイメージ。
    長期的な養分供給を要するなら牛糞、土壌の改良やフカフカ感を求めるなら馬糞、と目的に応じて選ぶのが良いでしょう。
     
    >>【堆肥】動物の排せつ物を肥料として有効活用する方法はこちら
     
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