畜産分野におけるリステリア症とは?
まず、リステリアというと多くの方々はヒトにおける「妊婦さんが気を付ける菌」という認識が強いかと思います。
以前弊社のコラムでも記載がございましたので、詳細はそちらにお任せしてしまいましょう。
>>リステリア食中毒の詳細な症状とは
畜産分野におけるリステリア症とは?
本題の畜産分野ではというと、『病性鑑定マニュアル 第4版』にて「リステリア症(牛)」と項目がございます。
牛では散発的、めん羊では集団発生し、その原因菌はListeria monocytogenes(加えてめん羊ではListeria ivanovii)です。分娩やその他ストレスなどで免疫が低下した際に発症しやすくなり、ヒトと同じように経口感染が主で流産(流産型)・神経症状(脳炎型)・敗血症(敗血症型)などを引き起こします。また、牛よりも頻度は低いですが、豚や鶏での発症例も報告されており、豚では同様の神経症状や流産、敗血症、鶏では斜頸・旋回運動などの神経症状を呈すると言われています。
日本での家畜におけるリステリア症の発生状況ですが、鶏では2001年頃に初めて報告がされて以来ほとんど報告がありません。豚では1954年に初めて報告がされていますが、こちらもほとんど報告がありません。対して牛では毎年数例ではありますが、報告があります。しかし、令和6年よりリステリア症などで起立不能に陥った死亡牛個体では、獣医師によるBSE検査が必要となりましたので、以前よりも表舞台に現れる可能性は増えるかもしれません。
家畜伝染病予防法施行規則及び BSE 特別措置法施行規則が改正されただけでなく、と畜場法ではリステリア症と診断された家畜は屠殺と解体禁止、解体後にリステリアが確認された場合は全部廃棄とされています。糞便や畜舎環境等からリステリアの定性検査を実施することにより、農場の汚染状況やリステリア症発症のリスク等を確認することができると筆者は考えておりますので、農場のモニタリングの一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。