レジオネラ属菌について解説!
最近、大阪・関西万博や、全国の温泉施設でも話題となっているレジオネラ属菌ですが、実は夏から秋にかけて感染報告が増える菌です。自然環境・土壌中に広く潜んでおり、閉鎖系の水環境で増殖しやすい菌です。お風呂やシャワー、温泉、水遊びなどを利用する機会が増えるこれからの時期は、特に注意が必要です。
国立健康危機管理研究機構の感染症発生動向調査週報(IDWR速報データ)によると、
2025年27週まで(2024.12.30~2025.7.6)の月別レジオネラ症例報告数は、6月で381名であり、1月から5月と比較して大きく増加していることがわかります。
出典:公益社団法人 全国水利用設備環境衛生協会
また、2025年27週までの累積報告で、1,125名のレジオネラ症感染者が報告されました。前年同週(976名)と比較して約15.3%の増加が見られ、今後さらなる感染拡大のリスクが懸念されます。基本的な感染対策の徹底や、最新情報の確認など、十分な注意が必要です。
出典:公益社団法人 全国水利用設備環境衛生協会
今回はそんなレジオネラ属菌について、症状や予防方法など、わかりやすく解説します。
レジオネラ属菌とは
レジオネラ属菌は、微生物学的な分類でLegionella属(Genus Legionella)に属する全ての菌を指します。グラム陰性の桿菌で、通性細胞内寄生性菌です。
自然界(河川、湖水、土壌など)に生息している細菌であり、ある程度のレジオネラ属菌が呼吸器感染するとレジオネラ症(肺炎)を引き起こします。レジオネラ属菌はおよそ60種類が知られています。
レジオネラ症とは
レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症です。現在届出型で、重症の肺炎を引き起こすレジオネラ肺炎型と、一過性で自然に改善することが多いポンティアック熱型があります。
症状
レジオネラ肺炎の潜伏期間は2~10日です。全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振などの症状に始まり、咳、痰、高熱、悪寒、胸痛がみられるようになります。腹痛や下痢等の消化器症状や、意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状がみられるのも特徴です。適切な治療がされれば致死率は7%程度ですが、適切な治療がなされなかった場合には致死率は60~70%に増加し、命に関わることもあります。
ポンティアック熱の潜伏期間は1~2日です。発熱を主症状とし、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛などの症状が出現しますが、それらは一過性であり2~5日程度で自然治癒することが多いです。
ただし、高齢者や重喫煙者、大量飲酒者、糖尿病、慢性呼吸器疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾患などを患っている感染防御機能が低下した患者では、肺炎を起こすリスクが高いので、特に注意する必要があります。
感染経路
主にレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)の吸入などによって感染します。レジオネラ属菌はヒトからヒトへ感染することはありません。
1. エアロゾル感染
レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾルを吸入することによって感染します。代表的な感染源としては、冷却塔水、加湿器や循環式浴槽などが報告されています。
2. 吸引・誤嚥
温泉や河川に入った際に、汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染事例が報告されています。
3. 土壌からの感染
レジオネラ属菌に汚染された腐葉土の粉塵を吸い込んだことが原因と推定される感染事例が報告されています。
治療
レジオネラ症はレジオネラ属菌による細菌感染症なので、ニューキノロン系やマクロライド系、リファンピシン等の抗菌薬で治療することができるといわれています。有効な抗菌薬の投与がなされない場合は、重症の場合、7日以内に死亡することが多いので、早期診断、早期治療が重要です。
これに対してポンティアック熱は、自然に軽快し、抗菌薬なしでも数日以内に改善することが多いといわれています。
予防
循環式浴槽等においては、定期的な洗浄により汚れやバイオフィルム(ぬめり)のない環境を保つことで、レジオネラ属菌の増殖を抑えることが出来ます。適切な消毒薬(次亜塩素酸Na等)でより継続的な衛生管理が出来ます。また、レジオネラ属菌の増殖する20~45℃を外した温度での管理、レジオネラ属菌が殺菌される60℃以上での管理も有効的です。
加湿器などの様なミストを発生する機器を使用する際は、毎日水を入れ替えて容器を洗浄し、必要において塩素消毒を行い、使用後はタンク内の水を抜いて乾燥しましょう。
食環研では
弊社ではレジオネラ属菌を含む浴槽水自主検査項目に対応しております。
レジオネラ菌に対する殺菌・抗菌効果試験等も対応可能です。
ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
>>レジオネラ属菌検査ページはこちら
>>殺菌、ウイルス不活化試験ページはこちら
参考ページ
>>レジオネラ症 Legionellosis | 東京都感染症情報センター
>>レジオネラ症|厚生労働省
>>レジオネラ症|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
>>レジオネラ感染者報告数|公益社団法人 全国水利用設備環境衛生協会