アスベストの歴史|“夢の素材”が危険視されるまで

かつて「夢の素材」として重宝されたアスベスト(石綿)。
でも今では、「健康被害」や「解体工事のリスク」といった言葉と一緒に語られることが多いです。
今回は、そんなアスベストがなぜ使われ、どうして問題視されるようになったのか、その歴史をやさしく解説します。
 

昔からあった?アスベストのはじまり

アスベストの歴史はなんと古代文明までさかのぼります。
古代ギリシャでは、アスベストの繊維を布のように使い、「火にくべて(火の中にいれること)も燃えない布」として驚かれていたそうです。
耐熱性があり、とても丈夫だったため、神殿や遺体の火葬儀式など、特別な用途で使われていた記録もあります。
 

産業革命で「奇跡の鉱物」に

アスベストが本格的に利用され始めたのは19世紀後半の産業革命以降。
工場や鉄道、蒸気機関など、熱を使う機械が増える中で、「熱に強い」「電気を通さない」「安くて加工しやすい」といったアスベストの特性が大いに役立ちました。
20世紀には、日本でもビルや学校、住宅などの建材に広く使われるようになり、「断熱材」や「防音材」として当たり前のように利用されていたのです。
 

見過ごされていた健康リスク

便利な素材だったアスベストですが、じつは早い段階から健康への影響が疑われていました。
アスベストの繊維はとても細かく、空気中に舞うと肺の奥まで入り込んでしまいます。これを長期間吸い続けると、「中皮腫(ちゅうひしゅ)」「肺がん」「石綿肺」といった病気を引き起こすことがわかってきたのです。
ただし、これらの病気は発症までに10年〜40年ほどかかるため、問題が表面化したのはずっと後になってからでした。
 

世界中で使用禁止の流れに

1970年代以降、海外ではアスベストの健康被害が大きく報道され、使用禁止の動きが強まりました。
日本でも段階的な規制が進み、2006年には原則としてアスベストの使用が禁止されました。
2020年代以降は、古い建物の解体時にアスベストが飛散しないよう、厳格な取り扱いルールが設けられています。
 
アスベストの歴史図解年表

時代出来事・利用例
紀元前2500年ごろフィンランドでアスベストを土器に混ぜて利用
紀元前5世紀古代ギリシャで「燃えない布」として使用、儀式用に
紀元前1世紀ローマ時代、火葬や神官の衣服に使用
中世(5〜15世紀)ヨーロッパで“火で洗える布”として貴族が使用
13世紀〜中国で「火浣布(かかんふ)」と呼ばれる布が登場
19世紀後半産業革命で建材・断熱材として大量使用が始まる
20世紀後半健康被害が社会問題に、世界で使用規制が進む
2006年(日本)原則としてアスベストの使用が禁止される

 

今も残る「見えないリスク」

アスベストはすでに禁止された素材ですが、1970〜90年代に建てられた建物には、いまだに多く使われています。
特に、ビルや団地、学校などの大規模な建築物の中には、アスベストが含まれたままの場所も。
そのため、リフォームや解体工事の際には専門業者による慎重な対応が求められています。
 

素材の「安全性」ってなんだろう?

アスベストの歴史は、ただの過去の話ではありません。
「便利さ」や「安さ」を優先してしまうと、長い目で見て人の健康や環境に大きな影響を与えることがある──。そんな教訓を、アスベストは私たちに残してくれています。
これからも、新しい素材や技術にふれるときは、「それって本当に安全なの?」と立ち止まって考えることが大切かもしれませんね。
 

ポイントまとめ

  • アスベストは古代から使われていた天然の鉱物繊維
  • 産業革命以降「奇跡の素材」とされ世界中で利用拡大
  • 吸い込むことで肺の病気などを引き起こすことが判明
  • 日本では2006年に原則使用禁止に
  • 今も古い建物に残っており、解体時には注意が必要
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