【有機酸】コハク酸とは?
コハク酸とは
コハク酸は、1550年にドイツの鉱山学者Agricolaが「琥珀」を蒸留し発見しました。蒸留による回収は3~8%だそうです。少量でも見逃さず、同定できたことが凄いですよね。
コハク酸はカルボン酸の一種で図1.のような構造をしています。
図1. コハク酸の構造
エネルギー生成に必要
コハク酸はクエン酸回路にも含まれており、エネルギー生成においても大切な成分です。
※クエン酸回路については、『有機酸② クエン酸』を参照ください。
図2. クエン酸回路図
うま味成分としても
味を感じるメカニズムは舌の味蕾にある味細胞の受容体によって決定されます。基本五味(①甘味、②塩味、③酸味、④苦味、⑤うま味)は、それぞれの味特有の受容体があります。また現在の基本味は五味のみで、その定義は様々な文献で提唱されていますが下記が重要となります。
①味蕾の味細胞にその味特有の受容体があること
▼味蕾については過去コラムを参照ください。『味に関わるおいしい話① 味覚とは?』
②他の味を混ぜ合わせて作れない独立した(互いに明確に区別できる)味であること
③その味を判別することは生死に関係するということ
コハク酸は、貝類のうま味成分として知られていますが、グルタミン酸のようなアミノ酸系うま味成分を検知する受容体T1R1/T1R3には検知されず、コハク酸受容体については不明でした。
今年(2025年)になり、Kitajimaらの研究で味蕾細胞にあるGPR91受容体がコハク酸を検知することが発見されました。2020年にはすでに、Maらの研究でコハク酸二ナトリウムの旨味強度が科学的に示されています。これらの発見により、旨味の定義や味覚の分類に新たな知見が加わり、今後「第六の基本味」として考えられるかもしれません。
食品への応用
コハク酸はコハク酸二ナトリウムとして食品添加物としても使用されています。うま味と酸味を整える効果があります。天然では、アサリやホタテなどの貝類に含まれる他、チーズの発酵過程で乳酸菌により生成されることもあり、うま味やコクなど味覚に影響を与えていると考えられています。
有機酸を含む栄養成分検査はこちら → 『一般栄養成分』
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引用
1. Kitajima, S. et al. (2025). Involvement of GPR91 in the perception of the umami-like shellfish taste of succinate. Food Chemistry, 477, 143549referencecitationanalysis.comreferencecitationanalysis.com
2. Ma, J. et al. (2020). Quantitative analyses of the umami characteristics of disodium succinate in aqueous solution. Food Chemistry, 316, 126336pubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov.