ノロウイルスにも種類がある!ウイルスの遺伝子型ってなに?

先日、ノロウイルス(遺伝子型GⅤ;マウスノロウイルス)の新規試験開始をニュース&トピックスにアップいたしましたが、そもそも遺伝子型とはいったい何を表すのか、遺伝子型GⅤはいったいどのようなウイルスなのか、本コラムでご紹介いたします!
 

ノロウイルスとは

ノロウイルスは直径約30~40 mmの金平糖のような形状(下図)をしており、「ノロウイルス」は分類学上、属名にあたり、種名はノーウォークウイルスです。
 

カリシウイルスノロウイルスノーウォークウイルス(GⅠ~GⅤ)
サポウイルスサッポロウイルス
ラゴウイルスヨーロッパ褐色夜兎症候群ウイルス
ウサギ出血病ウイルス
ネボウイルスニューバリー-1ウイルス
ベシウイルスネコカリシウイルス
豚水疱疹ウイルス

 
ノロウイルスはエンベロープを持たないためエタノールに比較的耐性です。そのため、消毒剤には次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。
加熱による不活化は、中心温度85℃、1分以上の加熱が必要となります。
→ノロウイルスの感染による症状やその他コラムについてはこちらをチェック
 

「遺伝子型」とは

ウイルスの遺伝子型とは、ウイルスの遺伝子配列の違いに基づいて分類した型のことです。
例えば、C型肝炎(HCV)の場合も主に1型~7型の遺伝子型に分けられますが、日本では感染者の多くが1型と2型となっていて、3型~7型はわずかです。1型と2型でも下表のような違いがあります。
 
ノロウイルス
 

遺伝子型日本での感染者の割合インターフェロン治療※1
HCV 1型約70%効きにくく、ウイルス量が減らない
HCV 2型約30%感受性が高く、有用性がある

※1 ウイルスの増殖抑制や免疫細胞の活性化を促すタンパク質を薬として体外から補給する治療法
 
遺伝子型が異なると、ウイルスが持つ感染性や病原性、治療効果などが変わることがあるため、とても重要な分類となります。
 

ノロウイルスの遺伝子型

ノロウイルスはGⅠからGⅤの遺伝子群に分類され、さらに数種類の遺伝子型へ細分化されます。
ヒトに感染するのはGⅠ、GⅡ、GⅣの3つの遺伝子群で、ヒトの感染症や食中毒から検出されるノロウイルスの大半はGⅠとGⅡに属しています。ヒトノロウイルス(HuNoV)は未だ培養細胞や小動物での増殖に成功しておらず、このことはウイルスの性状究明や抗ウイルス薬の開発などの研究を進める上で大きな支障となっています。
GⅤに属するマウスノロウイルス(MNV)は、ノロウイルス属の中で唯一培養細胞での増殖に成功しており、HuNoVの代替として用いられています。
 

食環研では・・・

ノロウイルスの不活化試験でネコカリシウイルスを代替として使用してきましたが、MNVを使用した試験も開始いたしました。液体サンプルや材質表面等、多様な検体に対して対応が可能です。求める効果やご予算に応じて最適な試験内容をご提案いたします。
 

 
参考ページ・文献
>>ノロウイルスとは(国立医薬品食品衛生研究所)
清水 優子, 牛島 廣治, 北島 正章, 片山 浩之, 遠矢 幸伸
ヒトノロウイルスの代替としてマウスノロウイルスを用いた消毒薬による不活化効果環境感染誌,
2009, vol.24, no.6, p.388-394
 
 

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