牛乳のアルコール検査方法|身近な科学

はじめに

私たちの生活に欠かせない「食」。笑顔で「食」を楽しむには安全であり安心できるものであることが必要不可欠です。そこで今回は、牛乳を用いた“身近な食品衛生”についてお話ししようと思います。
牛乳は採取してから多くの検査を経て私たちの食卓に並びます。今回はその多くの検査の中から鮮度を確かめる“アルコール検査”についてご紹介いたします。
 
牛乳イメージ画像
 

アルコール検査とは

現場検査(集乳所、ミルクプラント、乳製品工場で受乳する際)で鮮度が低いものを排除する目的で用いられています[1]。70%エタノールを等量混合した時に、鮮度が低い牛乳では溶液中に凝固物が発生します(アルコール凝固)。これによって鮮度を見極めることができます。
アルコール検査を行った時に凝固物を生ずる牛乳をアルコール不安定乳といい、滴定酸度の面から高酸度乳(酸度 0.18%以上)、低酸度乳(0.11% 以下)に分けられます[2]。
 

高酸度乳と低酸度乳がアルコール凝固を示す原因

アルコール凝固の原因は、高酸度乳では、不適切な搾乳衛生や搾乳後の保存管理の不備などから生乳中の細菌数が増加することによるものです。細菌の増殖により、乳糖が分解し、乳酸が作られることにより酸度が高くなり、蛋白質と結合していたカルシウムが遊離、このため蛋白質の変性が起こり、アルコールと混合されることにより脱水され凝固すると言われています[3]。
低酸度乳のアルコール凝固の原因は、牛乳中の主要な乳蛋白であるカゼインの変性とカルシウムイオンやマグネシウムイオンのバランスの変化によって凝固が起こると考えられています[3]。しかし、環境的要因や潜在性疾病、飼料的要因、内分泌的要因なども考えられており、複数の相互関係もあるようで未だに明確にされていません[2]。
 

牛乳に生えやすい細菌

高酸度乳の原因となる菌は、乳酸菌、大腸菌群などがあります。
大腸菌群は、グラム陰性の無芽胞桿菌で、48時間以内に乳糖を分解して酸とガスを産生する好気性または通性嫌気性と定義される一群の細菌です。乳牛の健康を脅かすことや、私たちに食中毒をもたらす原因にもなります[4]。
 
>>大腸菌群
 

アルコール検査の方法

さて、ここまでお話ししましたアルコール検査ですが、実は家庭でも簡単に行うことができます。
 

  • 牛乳(1~2 cc)
  • 70%エタノール
  • シャーレ又は紙皿
  •  
    清浄なシャーレに牛乳と70%エタノールを等量加え、直ぐに混和します。混和後、凝集の有無を確認します。
    材料や方法が容易なため、ご家庭でも使いきれなかった牛乳や、賞味期限切れの牛乳を試してみるとよいかもしれません。
     

    おわりに

    このコラムを通して、科学が身近な存在になってくだされば幸いです。
    私たちの食卓に安心・安全が届けられるように、弊社では食品の様々な検査を行っております。特に微生物検査にご興味ある方は是非こちらをご検討ください。
     
    >>細菌・ウイルス検査はこちら
     

    参考文献

    [1]技術講習牛乳検査法(1)
    [2]アルコール不安定乳対策-香川県公式ホームページ
    [3]酪農・豆知識 46
    [4]原料牛乳をめぐる衛生上の諸問題 微生物学的および化学的乳質とその異常並びに対策
     
     

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