【有機酸】リンゴ酸とは?

リンゴ酸とは

1785年にリンゴジュースから単離され、リンゴ酸と名づけられました。りんごの酸味成分であり、他にも梨、ぶどう、ザクロ、トマト、梅などの中にも含まれています。他の有機酸同様酸味があるため、酸味料をはじめとした食品添加物や洗剤、化粧品などに利用されています。
 

リンゴ酸の構造

リンゴ酸は下図のような構造をしており、4つの異なる置換基(-H、-OH、-CH2COOH、-COOH)と結合した不斉炭素原子(*)を持ちます。
 

 
そのため、キラリティーのある鏡像異性体であるL-リンゴ酸とD-リンゴ酸が存在します。自然界で存在するリンゴ酸は、L-リンゴ酸です。化学合成でつくられ、工業用に使用されるリンゴ酸は、D体とL体が等量含まれるラセミ体(DL-リンゴ酸)です。
 

 

L-リンゴ酸

リンゴ酸には疲労回復の効果が期待できます。これは、『有機酸②_クエン酸』で説明したTAC(クエン酸)回路中の化合物の1つにリンゴ酸が含まれているためです。リンゴ酸を摂取することでクエン酸回路を活発化させ、エネルギー供給や疲労物質の分解をスムーズに行うことが期待できます。この効果が期待できるのは、天然に存在するL-リンゴ酸のため、果物や野菜、サプリメントでの摂取が効果的です。
またクエン酸と同じようにリンゴ酸も体内をアルカリ性に保つ効果があります。そのため、消炎症効果や胃腸痛を抑える効果があることが知られています。風邪症状(喉の痛み、関節痛)が出た時に、りんごをすりおろし、はちみつを食べると良いというのは、科学的にも合致しています。
 

DL-リンゴ酸

①食品添加物

加工食品の酸味料、乳化剤、pH調製剤として、ジュース、ゼリー、漬物、ジャムなどに使用されています。
 

②ヘアケア

リンゴ酸と経皮吸収促進剤を合わせることで、ダメージを受けた毛髪の空洞を埋める効果があります。シャンプーのpH調整剤として使用されることもあります。
 

②歯のホワイトニング

歯磨きでは落としきれない汚れや黄ばみを取り除く効果があります。
 

③カルシウムの吸収

クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)はカルシウムの吸収を高める効果があります。
 

④美肌・美白

リンゴ酸の酸により古い角質層を溶かし、表皮細胞のみを除きます。また、新陳代謝を促進し、肌の再生を促す効果があります。
 

リンゴ酸の融点

  • L-リンゴ酸:101~103℃
  • D-リンゴ酸:98~101℃
  • D,L-リンゴ酸:131~133℃

 
通常、純物質と比べ混合物ではエントロピーが高くなるため、凝固点降下が起きるのに対し、リンゴ酸はラセミ体の方が融点が高くなる特徴があります。
リンゴ酸は分子内にカルボキシル基を2つ持ち、ヒドロキシ基と合わせて3方向に分子間水素結合をとることが可能です。X線回折実験においてリンゴ酸は、分子が決められた方向に分子間結合をもつわけではなく、比較的乱雑な配置のまま分子間水素結合をとることが示唆されています。リンゴ酸が 3つの分子間水素結合を利用して構造が生成されているとすると、DL混合系の方がL体のみの構造よりも分子の向きにより自由度が生まれ、複数の分子間水素結合をとり得る可能性があり、DL-リンゴ酸の融点が高くなると考えられています。
 

有機酸の今後の活用

分子構造の違いで、得られる効果や、物性の違い、活用方法や用途が変わることが、リンゴ酸からわかったと思います。身近な有機酸もよく調べてみると、とても興味深いものだと思います。こんな果実酸を製造し、研究・活用の幅を広げている会社が日本にあることをご存知ですか。リンゴ酸をはじめ、他の有機酸をより詳しく知りたい方は、『扶桑化学工業株式会社』HPもチェックしてみてください☆
 
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/springresrep/11/2/11_114/_pdf/-char/ja
 
 

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