微生物検査における定性検査と定量検査の違いとは?
食品、医薬品、環境、医療などのさまざまな分野で行われる微生物検査には、「定性検査」と「定量検査」という2つの基本的なアプローチがあります。
この2つは目的も手法も異なり、使い分けが非常に重要です。本コラムでは、その違いと使い分けのポイントを分かりやすく解説します。
定性検査 | 定量検査 | |
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違い | 対象の微生物が「存在するかどうか」を確認する検査 | 対象の微生物が「どれくらいの数存在するか」を測定する検査 |
特徴 |
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使用例 |
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目次
定性検査とは?|いる・いない」を明らかにする
定性検査は、対象の微生物が「存在するかどうか」を確認する検査です。たとえば、「大腸菌群が検体中に存在しているか?」、「この生肉にサルモネラ菌がいるか?」という問いに答えるのが定性検査の役割です。
特徴
- 結果は「陽性(+)」「陰性」で示されます
- 感度が高く、微量でも検出可能です
- 主に「安全性確認」や「汚染の有無」のチェックに用いられます
使用例
- 食品衛生検査におけるサルモネラや腸管出血性大腸菌(O157)のスクリーニング
- 飲料水の検査における指標菌の有無の確認
定量検査とは?|どのくらいの数がいるか」を測る
定量検査は、対象の微生物が「どれくらいの数存在するか」を測定する検査です。微生物の汚染レベルや増殖の程度、また製品の衛生状態を把握する際等に活用されます。
特徴
- 結果は「cfu(colony forming unit):コロニー形成単位)/g」や「個数/mL」などの数値で示されます
- 一定の基準値と比較して評価を行います
- 微生物の増殖状況や除菌効果の評価に有効です
- MPN(Most Probable Number)法は定量ですが「推定値」であり、培地数本を用いた確率計算で結果を得ます(特に腸炎ビブリオなどに使われます)
使用例
- 食品や医薬品の一般生菌数の測定
- 発酵食品における乳酸菌の数量確認
両者の使い分けと重要性
定性検査と定量検査は、互いに補完し合う関係にあります。たとえば、ある食品の検体に対して、まず定性検査で危険な病原菌の有無を確認し、次に定量検査で全体の菌数や許容範囲内かを評価する、といった使い方もできます。
どちらの検査も目的に応じた正しい選択が重要です。安全性の確認が最優先の場合は定性検査、品質の評価や工程管理には定量検査が主に用いられます。
定性・定量検査の例
下記に、定性検査と定量検査どちらもよく行われる大腸菌群について、定性検査と定量検査の違いについて示しました。
【検査種別】大腸菌群
主な培地(例) | 結果表記 | |
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定性検査 | BGLB発酵管 | 陰性 or 陽性 /0.1g |
定量検査 | デソキシコレート寒天培地 | cfu/g |
おわりに
微生物検査は、単なる「菌の有無」や「数の多さ」を調べるだけではなく、製品や環境の安全性・品質を守るための重要な手段です。定性検査と定量検査、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが、信頼性の高い検査結果と安全な社会の実現につながっていきます。
弊社では、微生物各種の定量検査・定性検査に対応しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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