食品に関わる法とモラル

当社のように食品衛生のコンサルタントを行っていると、法とモラルの間でどのように応対して良いのか困ってしまう事があります。ご存知のように食品に関わる法律は数多く、その指揮する省庁も厚生労働省や農林水産省等と分かれています。

最近は食品にまつわる事件が増加し、法律の見直しがされています。食品に対する消費者の関心の高まりは良い傾向にあると思っていましたが、法的な問題とモラル的問題をごちゃ混ぜにしている報道は視聴した人に対して火に油を注いでいるようで本質的な問題が浮き上がりにくくなっている悪い傾向にあると思います。

「食品問題は視聴者がすべて被害になりうる訳で、企業に対しての制裁的な報道だけでなく問題の本質もきちんと報道しないと視聴者に誤解も多々生じるのではないかと思いました。世間を騒がした老舗菓子メーカーにおけるシュークリームの消費期限切れ原材料使用問題がまさにそれです。

賞味期限を含めた食品の表示に関しては、「食品衛生法」や「JAS法:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」や「景品表示法」や「計量法」等の多くの法律が関わっており、それぞれの法律では最近まで整合性が取れておらず、用語や定義が統一されていませんでした。

それが近年の不正表示事件がきっかけとなり、見直しされたばかりです。改正のポイントは「消費者が不利益を被らないように、消費者に向けたきちんとした情報の提示」です。そこで「賞味期限」に関しては、まず語句が統一され(食品衛生法では、品質保持期限という用語であった)、定義も「定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。
ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。」と定められました。これは供給者の需要者に対する保証期間と捉えられ、供給者が自由に定められます。ただし、期限を定める際には品質を保つ根拠を科学的に検証し、それに準じて定める事が必要とされています。そこで供給者が科学的に検証された期限を逸して、それ以上の賞味期限を表示した場合なら法的に問題があることになります。

消費期限切れ原材料使用事件に関してはこれに該当するのだと思います。しかし、期限切れの原材料を製造側で使用しても問題がないと判断し、それを使用した加工品の賞味期限を科学的に検証して表示した際には法的に問題があると言えるのか?というと、どうなのでしょう。現行の法的な解釈だけではそこが難解です。

おそらく法的には問題がないと思えるからです。法とモラルのごちゃ混ぜ報道に関しては法的に問題がなくても、モラル的に問題とされる行為に当たるとすれば、使用する事は問題となると決定付けられました。そうすれば定義にあるような期限が切れても明らかに何の問題もない食品の存在は、モラル的に判断すると問題ある食品となります。
モラルで判断という基準は何か釈然としない感があります。このようなケース、判断基準はやっぱり法的な根拠があったほうがベターだと思います。今後、食品に関する法律は、もっと解りやすく現代に即した実用的な法律にすべきではないのでしょうか?

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