カンピロバクターにご注意を

群馬県内において09年5月末、6月初頭と立て続けに食中毒の被害が届出られました。どちらの食中毒事件もその原因となったのはカンピロバクター属菌であるとのことです。

平成20年度群馬県内で起きた食中毒事件は総計25件、罹患者数は579人でした(全国では総計約1400件、罹患者数約24000人)。全国での罹患者ベースではノロウイルスが約半分を占めるなど、圧倒的に多いのですが、全国の発生件数ベースではカンピロバクターに拠るものが1位となっています。

数年前までは食中毒の常連というと、腸炎ビブリオやサルモネラ属菌でした。以前もカンピロバクターの報告はあるものの、現在ほど多くはありませんでした。では、カンピロバクターとはどのようなものでしょうか。

カンピロバクターは、ニワトリ、ウシ等の家きんや家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物などあらゆる動物が保菌しています。2006年時では17菌種6亜種3生物型に分類されており、ヒトの下痢症から分離される菌種はカンピロバクター・ジェジュニがその95〜99%を占め、その他カンピロバクター・コリなども下痢症に関与しています。そして、100個程度と比較的少ない菌量にて感染が成立することが知られています。

症状については、下痢、腹痛、発熱、嘔吐、頭痛、悪寒などであり、感染型細菌性食中毒の典型といえます。大抵の場合1週間で治癒しますが、免疫力が低下しているときなどには注意が必要です。また、潜伏時間が一般に2〜5日間とやや長いことが特徴です。

そのほかに、カンピロバクターは、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こすギラン・バレー症候群との関連性が示唆されています。このカンピロバクター食中毒の原因食品として疑われるものは主に鶏肉と牛レバーです。市販されている鶏肉の60〜80%、牛レバーの25%程度からカンピロバクターが分離されたという調査結果があります。カンピロバクターの食中毒ではこれらの製品の加熱不足や取り扱い時における二次汚染が直接の原因であると考えられます。

実際に群馬県内で起きた二つの食中毒事件では、製品の加熱不足が確認されました。これからの時季、バーベキューなど外で鶏肉などを調理する機会が増えるかと思われます。特に自家製漬け込み処理などをする場合は、通常時に比べ、菌が肉内部へと浸潤する可能性が高いので、しっかりと加熱しましょう。

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