洗浄と消毒の重要性について

この頃農場に伺っていると意外に多い質問があります。それは、『消毒薬は何を使ったらもっと効果的に病原菌やウイルスが減らせるのかな・・』との相談です。
どうしても私たちは消毒薬の種類で殺菌・殺ウイルス効果が左右されると思いがちになりますが、実際はそうではないのです。今回は畜産経営の要(基本中の基本)である洗浄と消毒について、この業界でもリーダー役になっている養鶏場の考え方や手法を元に考えて行きたいと思います。

消毒の効果が見えない?
実際に皆さんの農場で消毒の効果がはっきりと解る(正確に明確に成績に出る)農場はどれだけあるでしょうか?。
養鶏場の多くはスタンプスプレード等の確認器材によって、洗浄と乾燥後や消毒と乾燥後の効果が出ているか否かの確認検査を行っています。
近年は養鶏場の衛生管理と同等以上の意識で取り組みを行っている養豚場も増えてきていて、弊社にも依頼が増えつつありますが、実際にはここまで行っている農場は少ないのでは無いでしょうか。
養鶏場では効果がはっきりと解らない場合は、清掃方法、洗浄方法、消毒薬の使用方法、消毒薬の再選択、乾燥状況、空舎期間状況等、細部に亘り徹底的な話し合いを行っています。養鶏場と養豚場では、洗浄と消毒に対する取り組みの姿勢とその考え方がスタート時点から異なっているのです。

養鶏場が洗浄と消毒にこだわる理由
それでは何故養鶏場がここまで洗浄と消毒にこだわりを持つのでしょうか。
養豚場が洗浄と消毒を行う理由は豚の疾病感染の軽減、つまり豚が病気に掛からない様にする考え方がメインとなっています。それでは養鶏場はどうでしょうか。
基本的な考え方は養豚場とは変わらず、鶏が疾病に侵されない様に行っています。しかし、大きく異なる事は、鶏卵、鶏肉等の消費者が購入する商品自体にも、病原菌やそれ以下の雑菌に至るまで汚染されない事を目的にしているからに他なりません。
養豚場は豚を病気から守る事を前提としている事が多いのですが、養鶏場は鶏の健康もさることながら、”人の健康まで考えた洗浄と消毒”を行っているのです。病気に感染してはいても、発病してなければ出荷する事が出来る養豚と、発病していなくても感染段階(菌の存在を確認した時点、例えばサルモネラ、大腸菌等)で出荷が出来ない、鶏群の淘汰もありうる養鶏では根本的な管理に対する意識が異なっているのです。

洗浄と消毒の考え方の一例(フローチャート)
(1)整理整頓⇒(2)徹底清掃⇒(3)徹底洗浄⇒(4)徹底乾燥⇒(5)徹底消毒⇒(6)徹底乾燥⇒(7)空舎期間(長すぎても短すぎても駄目)⇒受け入れ。

洗浄消毒を行う4つの目的
目的(1)疾病予防。目的(2)安全な食の生産。目的(3)周辺への汚染と伝播の防止。
目的(4)安全で快適な労働環境の確保。

洗浄消毒を行う際の重要ポイント
感染経路対策=感染経路を断つこと。
【病原菌やウイルスは独力で飛行して伝播することは出来ず、必ず媒介するもの(道筋)がある。これらを断ち切ることが大切。洗浄・消毒がこの代表。】
道筋:塵埃、水、飼料、器具器材、野鳥、昆虫、鼠、人、車輌等。
侵入:目、鼻、口、傷口等。

洗浄消毒を行う上での注意点
(1)丸洗いが出来るオールイン・オールアウト式ウインドレス舎と、部分洗浄と部分移動の開放舎では消毒方法の選択が異なります。
特に高い温度のお湯やスチームによる消毒は、前者では効果が発揮されますが、後者では逆影響にもなってしまいます。
(2)有機物の存在と畜舎のpH域によっては消毒効果に格差が生じやすくなります。
特にリキッドフィーディングシステムは飼料が酸性側になるので、洗浄が十分でないとpH域が異なる消毒薬の効果が発揮されにくい場合がある
(3)逆性石鹸製剤は使用温度に効果が左右されます。
特に冬季の低温(水温10度以下)ではほとんどと言って効果が発揮出来ません。逆性石鹸製剤の消毒効果はお湯を使用する事によって向上して行きます。出来れば30度〜60度位のお湯で希釈して使用して見て下さい。消毒薬の希釈倍数を高くしなくても、消毒効果が表れている現場結果も存在しています。畜舎構造毎に採用する際には相談が必要にはなりますが、経費が抑えられ、消毒効果が向上し、乾燥を早く促し、作業員の体の負担を軽くする事が出来ます。
(4)消毒は消毒薬がメインで行うものではありません。それを行う作業者の意識と丁寧さが重要になります。高い消毒薬や見た目で如何にも消毒効果が表れていそうな消毒薬は、実際には結果が伴っていない事が多いのです。

消毒の効果を表す指標。
評価:1項目を1〜10段階で評価、最大の効果で10000。
指標:消毒薬の効力×消毒技術・機械の性能×徹底度・丁寧さ×頻度。

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