行動制限された母豚での出産直後の子豚の免疫システムに与える影響

(ピッグジャーナル2015年5月号掲載) 

The effet of immobilization stress of sows on selected imunity parameters in piglets in the early potnatal period 

 

1、序論
 

 妊娠豚の行動制限は動物福祉を考える上でよく議論されている。この飼育システムにおける健康的な側面について、長期のストレスが動物の免疫機能に悪影響を与える根拠となっているにもかかわらず、軽視されている。妊娠豚舎における妊娠動物に対する出産前のストレスは、母豚だけでなく新生子豚にも影響を及ぼす。それは子豚の免疫システムを弱め、さらに罹病率も高める結果を引き起こす。この研究の目的は、母豚の行動制限による出産前ストレスが子豚の免疫システムに与える影響を調査することである。
 

 

2、材料と方法
 

 調査は個別飼育と群飼育をしている2農場で実施した。 2つの設定群を以下に示す。
自由行動群(FM):この群の妊娠豚は10頭/ペンで、2.25㎡/頭のスペースで群飼育した。この群の母豚は自由行動が可能である。母豚は出産前に自由行動のできる個別のペンに移動した。子豚は生後28日齢まで母豚と同居させた。
行動制限群(MR):この群の妊娠豚は1.3㎡のスペースに個別飼育した。これらの動物の行動は立ち上がるか座るかのみに制限された。母豚は出産前に行動が制限される個別のペンに移動した。子豚は生後28日齢まで母豚と同居させた。 生後3、7、21日齢の全ての群の子豚から血液サンプルを採取した。
血液サンプルを用いてリンパ球の増殖についての検査を行った。

 

3、結果 

 Con Aに対するリンパ球の増殖反応は全期間(生後21日齢まで)を通して行動制限群の子豚で有意に低かった。PHAに対するリンパ球の増殖反応は生後はじめの3日間で行動制限群の子豚で有意に低かった。PWMに対するリンパ球の増殖反応は生後はじめの7日間で行動制限群の子豚で有意に低かった。 

 

4、結論と考察
 

 本研究で、母豚の行動制限は子豚のリンパ球の増殖を抑制する結果となった。これは母豚の行動制限が子豚に出生前ストレスを与えたことにより、コルチコイドホルモンが分泌され、子豚の免疫機能へ悪影響を及ぼし、免疫システムの発達を抑える結果となったと考えられる。本研究で、母豚の飼育状態と子豚の健康状態が直接的に関係することが示された。

 

pig journal 2015年5月号_図1.png

 

 
 
 
 
 
 
 
 

一言
 

今回は、海外の動物福祉で問題とされる飼育面積に関する研究論文を紹介する。日本は海外に比べると、密飼になる傾向にあるが、今回のように母豚と新生子豚の直接的な関係性が認められていることをみると 出来るだけ避けることに越したことはないと考えられる。

 

Proceedings of the 23rd IPVS Congress, Cancun, Mexico – June 8-11, 2014 P-708

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