生産現場での衛生検査の活用方法について!

検査を有効に活用するために
私は初めて伺った農場によく質問される事があります。
それは衛生検査に対する素朴な疑問で、その一部を抜粋すると、『検査機関が違うと検査結果の数値が異なるのは何故?』、『検査を行っても改善に向けた解答が十分に得られないんだよね』、『疾病に感染していますね・・、ワクチン抗体は充分にありますね・・の曖昧な解答で終わってしまう場合が多いんだよね』等があります。
本来は的確に”敵”を確かめ、生産成績を向上させて行く事が出来る検査が、かえって現場に混乱の種を蒔いて成績悪化の手助けをしている現状があるのは悲しい事です。
又、家畜防疫事業・検査事業を本業にしているからこそ解る重要な事もあります。それは、検査の方法毎にも特徴が存在し、この特徴を十分に理解しないまま検査ステージ、検査方法を決めてしまうと、正確な診断が出来なくなるということです。
もし貴方の農場の子豚に事故が発生したとしたら、育成舎、ストール舎、分娩舎、肥育舎等、問題が発生した場所以外の状況把握も必要になってきます。
検査項目についても、臨床症状、過去の検査結果、発生状況等により判断し、血液抗体検査だけではなく、病性鑑定検査も組み入れた総合検査を実施することが必要になります。
近年は浄化槽の排水検査でも多い話ですが、出で来た検査結果の理解度が低い為に、検査結果数値を理屈づめで理解しようとしてしまい、かえって生き物である浄化槽の状態が悪化する場合も増えています。
混乱してしまう検査の実施は、時には生産者、時には豚自体にも過度の負担が掛かってしまうのです。

衛生検査の組み方について

1.特徴の一例。

<血液抗体検査>

  • (1) 過去の免疫を診断する検査。
  • (2) 検査の実施目的によって採血するステージを検討する必要がある。
  • (3) 各疾病の検査方法によっても数値の出方や読み方が異なる。

<病性鑑定検査>

  • (1) 困った時に、ただ漠然と検査を実施している。
    その都度原因疾病を安易に決めてから検査を実施するため、正確な判断が出来ない。過去の失敗を繰り返す典型的な検査方法。
  • (2) 検査目的が曖昧。 検査結果が出ても改善方法が解らず、酷い場合は検査結果が出るのが数ヵ月後にもなり、その時点で検査した事さえも忘れている。
  • (3) 使用する検査機関がその都度異なる。
    検査結果が読みづずらく、私情が入った検査結果になりやすい。
    様々な軍師に頼ってはいるが、検査を行った機関は何らかの改善方法を指導するため、その検査機関毎の事情で、改善案を提示する形になってしまう。受け手である農場がしっかりしていなければ、情報量に惑わされてしまい、農場にとっては採血のストレスだけ残ってしまう結果になる。

2.特徴現場に役立つ衛生検査

  • (1) 検査の実施目的をはっきりさせる。
     農場の生産成績を向上させること(結果への結び付き)が唯一の目的になります。
  • (2) 検査方法の正しい選定を行う。
     各検査方法には特徴があり、検査目的に応じた検査方法を選定する必要があります。
  • (3) 検査項目を組み合わせる。
     目的の疾病があっても、その他の疾病検査を同時に実施する事で解る事実があります。
  • (4) 基本の抗体検査プランとその都度追加で行う検査プランは分けて組む。
     例えば春と秋に行う抗体検査は通信簿的な役割を担いますので、年間や季節の流れが掴み易い様にプランを組みます。これを基本にして、その都度協議しながら農場毎に追加検査を組む様にします。
  • (5) 体検査と一緒に病性鑑定検査も実施する。
    抗体検査で解る事実には限界があるため、実際に農場で発生している罹患豚や事故豚を用いた検査が重要になります。病性鑑定検査は、早い時間での診断や対応が可能になります。
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