哺乳豚における大腸菌およびクロストリジウム属菌に対する飼料中卵黄抗体(IGY)の有効性

(ピッグジャーナル2014年4月号掲載)


哺乳豚における大腸菌およびクロストリジウム属菌に対する飼料中卵黄抗体(IGY)の有効性

EFFICATY OF IN-FEED EGG YOLK ANTIBODIES (IGY) AGAINST ESCHERICHIA COLI AND CLOSTRIDIUM SPECIES IN NURSING PIGS

1.序論

  腸管毒素原性大腸菌は、0~4日齢の豚でよくみられ、下痢および死亡の主要な原因となっている。また、生後7日以内の子豚はクロストリジウムに感染しやすく、正常な細菌叢の発達が阻害されるため、抗菌剤の投与が必要となる。感染によって、離乳時体重の低下、離乳前の死亡率増加が生じ、養豚経営に大きな影響をもたらしている。ベトナムでは、抗菌剤の使用による薬剤耐性腸管病原菌の増加が懸念されており、この対策として抗菌剤に代わる治療法の開発が必要とされている。鶏卵の卵黄は、安価な抗体(IgY)の供給源として、さまざまな消化器系感染症の有効な免疫治療法として使用されている。鶏IgY抗体の使用は、子豚におけるE. coli K88、K99や987Pおよび離乳子豚におけるF18による下痢の治療法として有効であることが示されている。本研究の目的は、大腸菌とクロストリジウム属菌に対する特異的なIgY抗体を含んだ卵黄パウダーを飼料添加することによる有効性を、菌の発育程度および哺乳豚の成長成績から評価することである。

 

2.材料・方法 

 大腸菌およびクロストリジウム属菌に対する抗体を含んだ卵黄パウダー(EYP)を用いた。健康で腸炎やその他の疾病徴候を示していない92頭の子豚を、試験群および対照群に無作為に割り付けした。試験群では、5日齢の子豚に、大腸菌およびクロストリジウム属菌に対する特異的IgY抗体を含む0.4%卵黄パウダーを飼料添加して5日間給餌した。
  大腸菌およびクロストリジウム属菌を分離して排菌パターンを決定するために、5日目および12日目に糞便を採材した。
  下痢を呈した豚からも糞便を採材し大腸菌およびクロストリジウム属菌の感染割合を求めた。
大腸菌およびクロストリジウム属菌の検出には、プレートカウント法および最確数(MPN)法を用いた。

 

3.結果および.考察 

ピッグジャーナル2014.1(図1).jpg
 
 対照群に比べて試験群では平均一日増体量は増加した。
 

 
 対照群に比べて試験群では両菌ともに感染割合が低下した。
 
ピッグジャーナル2014.4(表1).jpg
 
 以上により、大腸菌およびクロストリジウム属菌に対するIgYを含んだ卵黄の給与は、子豚における大腸菌およびクロストリジウム属菌の排出量制御に有効である可能性が示された。

 

4.一言

  今回の内容は抗生剤使用よる薬物耐性菌株の懸念に伴う-代用法の一例である。抗生剤に比べて効果に課題がある研究であるが、研究の動向によっては鶏卵の有効利用と豚の疾病予防として興味深いものである。
  本論文で使用した卵黄パウダーは通常飼育した鶏から得た卵黄ではなく、予防した病気の抗原を免疫した鶏から得た卵黄を使っているようである。

 

Duong C.M. et al.
The 6th Asian Pig Veterinary Society Congress Ho Chi Minh City Vietnam
September 23-25.2013 PO145

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