分娩誘発、出生時体重、出生順、1腹当たりの産子数及び母豚の産歴による子豚の血清中免疫グロブリンG濃度への影響

ピッグジャーナル2014年5月号掲載

分娩誘発、出生時体重、出生順、1腹当たりの産子数及び母豚の産歴による子豚の血清中免疫グロブリンG濃度への影響

An investigation of the impacts of induced parturition ,birth weight ,birth order ,litter size ,and sow parity on piglet serum concentrations of immunoglobulin G

1.序論

 子豚はほとんど免疫グロブリンを有さず、未熟な免疫機能のまま生まれる。初乳中のIgGを得ることは伝染病から身を守り、免疫機能を発達させるために必須である。
 本試験の目的は、①分娩誘発をし初乳の摂取を管理した子豚と自然分娩し初乳の摂取管理をしなかった子豚を比較して血中IgG濃度に影響するかどうか、②子豚の血清IgG濃度が出生時体重、出生順、一腹当たりの産子数あるいは母豚の産歴に影響されるかどうか
を検討することである。

 

2. 材料と方法

 試験1では、対象母豚を分娩誘発(n=56)と自然分娩(n=84)のそれぞれの群に分けて行った。分娩誘発をして生まれた子豚は、初乳給与の補助を行った。
 一方、自然分娩をして生まれた子豚は一切補助しなかった。
 血清中IgG測定のために、一腹の中で小さい子豚(体重1.1㎏未満)中程度の子豚(体重1.1kg以上2.0㎏未満)大きい子豚(体重2.0㎏以上)各1~2頭ずつから3日齢時に血液を採材した。
 試験2では、母豚78頭おいて分娩して最初に生まれた子豚と最後に生まれた子豚から3日齢時に血液を採材し、血清中IgGを測定した。

 

3.結果

 試験1では、平均血清中IgG濃度は自然分娩の母豚から生まれた子豚よりも分娩を誘発した母豚から生まれた子豚のほうが高値であった(図1)。血清中IgG濃度は子豚の体重の増加に伴って増加した(表1)。1腹当たりの産子数が多かった場合では子豚の血清中IgG濃度は少なかった。血清中IgG濃度は母豚の産歴による影響はなかった。
 
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 試験2では、血清中IgG濃度について出生順による影響はなかった。

 

4.考察

 分娩誘発による分娩の管理は初乳摂取率を高められ、受動免疫をつける手助けとなると考えられる。試験1の結果から、分娩誘発することにより、血清中IgGが少ない子豚の数を減らすことができ、平均血清中IgG濃度が高くなった。
 しかし今回の試験の中では、分娩誘発した方が自然分娩で生まれた子豚に比べて血清中IgG濃度が高かったにもかかわらず、離乳前の死亡率に差がなかったため、血清中IgG濃度が高いことが経済的に利益があるかどうかを明確にできなかった。
 血清中IgG濃度が低かった子豚の大多数は体重が1.1㎏未満と小さかった。この結果を踏まえ、血清中IgG濃度が低く小さい子豚に対して初乳を補足給与することによって子豚の成長と発育を改善することができると考えられる。

 

5.一言

 分娩誘発による利点は作業員への負担軽減や分娩舎の使用効率向上などがあげられる。それに加えて、本論文から初乳摂取を手助けすることで血清中IgG濃度を高められる結果も得られている。子豚のステージ全体で免疫力を高めることで、その後のステージにおける潜在的な感染症リスク低減にもつながることから分娩誘発は利点があると思われる。

 

K. Nguyen,MSc et al Journal of Swine Health and Production―Volume 21, Number3

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