離乳豚の免疫応答に対するβ-グルカンとマンナンオリゴ糖サプリメントの補給効果

(ピッグジャーナル2014年6月号掲載)
離乳豚の免疫応答に対するβ-グルカンとマンナンオリゴ糖サプリメントの補給効果
EFFECTS OF β-GLUCAN AND MANNAN-OLIGOSACCHARIDE SUPPLEMENTATIONS ON IMMUNE RESPONSES OF WEANED PIGS

1.序論

 子豚は免疫機能の発達が十分でない。子豚の受動免疫は出生早期において母豚からの初乳を介して得られる。しかし、離乳後は母豚の初乳からの受動免疫機能は減弱し、哺乳期の短い期間に発達した能動免疫に頼ることになる。そのため、離乳早期における子豚の免疫応答は遅く、微弱なものである。β-グルカン(以下、BG)とマンナンオリゴ糖(以下、MOS)の特異的および非特異的免疫応答に対する効果が、様々な研究で報告されている。本研究は、離乳子豚の抗炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)およびPRRSの血中抗体価に対するBG+MOSの効果を評価することを目的とした。 

2.方法

 252頭の離乳子豚(大ヨークシャー×ランドレース×デュロック、24~26日齢、平均体重:7.10±0.54kg)を6週間の試験に供試した。
 供試豚は、無作為に3試験区×12頭×7反復に割り付けた。
 試験区を以下のとおりに設定した。
  
  試験区①:市販の基礎飼料を給餌
  試験区②:BG+MOSを飼料1tあたり1kg給餌
  試験区③:BG+MOSを飼料1tあたり2kg給餌
 試験区1反復ごとに、1頭の豚を無作為に抽出し、血液を試験開始後1、21および42日目に採取した。
 血液は血清分離し、IL-1、IL-6、TNF-αおよびPRRS抗体価について、ELISAキットを用いて検査した。 

3.結果

 血清中IL-1濃度、IL-6濃度、TNF-α濃度では各試験区間、各検査時点間において、有意差は認められなかった(表1、表2、表3)。
 
ピッグジャーナル2014年6月号表1.jpgピッグジャーナル2014年6月号表2.jpg
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 PRRS抗体価に関して、試験開始後1及び21日目においては各試験区間で同程度であった。試験開始後42日目には、BG+MOSを2kg/t添加した試験区3において、試験区1および2と比較して抗体価が高い傾向であった(表4、p=0.06)。
 
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 また、試験区の各検査時点間の比較において、PRRSの抗体価は、試験開始後1日目と比較すると試験開始後21日目で有意に低く(p<0.01)、試験開始後42日目に有意に高かった(p<0.01)。 

4.考察

 BG+MOSを2kg/tで添加した場合、有意差は認められなかったが血清中IL-1及びTNF-αの濃度を維持する効果があると推察された(表1、表3)。
 また、BG+MOSを2kg/t添加した試験区では、試験開始42日目に他の試験区と比較してPRRS等に対する抗体応答の増加がみられた(表4)。
 以上のことから、飼料にBG+MOSを2kg/t添加した場合、離乳子豚でPRRSに対する免疫を増強する可能性があると考えられる。

5.一言

 ヨーロッパでは抗生剤の使用量を減らしながら飼養する動きがある。本論文からβ-グルカンとマンナンオリゴ糖を飼料に添加することによって免疫力が強化される可能性が示唆された。このことから抗生剤の多用を防ぐための手段の1つとして、プロバイオテックスの研究に目を向けるのも面白いかもしれない。 

 
Phan T.Tuoi et all The 6th Asian Pig Veterinary Society Congress Ho Chi Minh City Vietnam
September 23-25.2013 PO83

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