豚の成長率に対する経口投与したキトサンの効果

(ピッグジャーナル2014年10月号掲載)

豚の成長率に対する経口投与したキトサンの効果

Effect of oral chitosan on the growth rate of grower pigs

1.序論

 キトサンは無毒で生物学的適合性および生分解性をもち、甲殻類の外骨格から得られる天然の多糖類である。
 キトサンはプレバイオティクスとして作用し、体液性と細胞性の両方の免疫応答を誘導することが実証されている。
 本試験では、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)が陽性の農場において、キトサンを豚に経口投与することによる成長期の豚に対する効果および費用対効果を評価した。

2.材料・方法.

 試験農場はマイコプラズマ・ハイオニューモニエ陽性の一貫経営農場を選択した。
 21日齢で離乳した豚を、試験区雄、対照区雄、試験区雌及び対照区雌の4グループに各10頭ずつ無作為に分けた。
 5%のキトサンを含む溶液1Lを25Lの水に希釈し、さらにドサトロンを用いて水道水内で1%に希釈(最終濃度:キトサン20ppm)したものを試験区に給与した。対照区には、飲水中に何も添加しなかった。
 キトサンの投与は、21日間連続で行った。他の全ての因子、例えば飼料、グループの頭数、畜舎の向き、飼育管理方法に関しては、全てのグループで同一条件とした。
 豚の体重測定は、試験開始時(21日齢)、42日齢、147日齢で実施した。
 供試した豚は、異なると畜場でと殺された為、屠体の確認や肺病変のスコア化は実施できなかった。

 

3.結果

 
ピッグジャーナル2014年10月号表1.jpg

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 試験区では対照区に比べ、雄と雌でそれぞれ5.3kg、5.5kgの明らかな増体効果が見られた。(表1)これは、キトサンを3週間投与する費用が1頭あたり0.15米ドルに対しておよそ1頭あたり8.10米ドルの収益に相当した(表2)。
 
 この増体効果は、以下の要因によるものであることが考えられる。
1)キトサンはプレバイオティクスとして働くことによって嫌気性細菌が発育する上で、有利な環境を作り出し、消化作用・栄養素の吸収を増進させた。
2) 体液性・細胞性免疫を刺激することによって、例えばマイコプラズマ・ハイオニューモニエなどの自然感染に対して、免疫反応を高めた。
3)キトサンは、樹状細胞、即ち抗原提示細胞を活性化させることによって免疫反応を大いに高めた。
4)K.N. Hanらによれば、キトサンは、子豚の飼料効率を向上させ、有害な細菌の増殖を抑制する。
5)血液は全身に循環する前に肺を通るので、肺は抗原にとって最初のフィルターとなる。

4.まとめ

 キトサンをプレバイオティクス及び免疫増強剤として豚に経口投与することで、1頭あたり7.95米ドルの大きな費用対効果があることを示した。
 今後更なる研究で、飼料摂取量、飼料効率、肺病変のスコア化及び抗体価の測定を実施する必要がある。また、健康性の高い豚に対してのキトサンの影響も検討する必要がある。

5.一言

 人の健康サプリメントにもなっているキトサンで豚の増体重がよくなる結果が得られた論文である。筆者のまとめにあるようにまだ検討しなければならない項目があるようだが、今後の研究の動向は興味深いと思われる。

Proceeding of the 23rdIPVS Congress ,Cancum,Mexico-June8-11,2014 P.124

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