個別飼育母豚からの口腔液採取:基準要素

(ピッグジャーナル2015年1月号掲載)
個別飼育母豚からの口腔液採取:基準要素
Collection of oral fluid from individually-housed sows : Baseline parameters

1、序論

 抗体検査やPCR法による口腔液の検査は、豚の個体群の伝染病の媒介状況を調査するために効果的な方法である。口腔液は一般的に育成豚から採取されるが、繁殖豚でも口腔液を採取することができる。個別飼育母豚からの口腔液採取することは分娩舎での病気の感染状況の監視を容易にし、さらに血液検体の採取量を減らすことができると考えられる。しかし、個別飼育母豚からの口腔液採取については公表されたデータがない。同様に、個別飼育母豚から連続的に採取された口腔液の検査結果の再現性についてもデータが少ない。このことについて調査するために試験を行った。 

2、材料と方法

 試験では過去に口腔液を採取されたことがない個別飼育及び群飼育の妊娠豚513頭を供試した。
 

 

(1)母豚の産歴と口腔液の関係

 (2)口腔液の再採取での影響 
 (3)同じ動物から2回連続して口腔液を採取したときの検査結果の再現性
 

 以上の3点について評価した。

 試験では各個体から2日間連続で口腔液を採取した。口腔液の採取方法としては、各ケージの前に綿100%、直径1.59cmのロープを30~45分間垂らした後、ロープから直接絞り出した。これにより、1.0mL以上の口腔液を採取した。口腔液採取完了後、無作為に選んだ妊娠豚48頭から得た口腔液のペア(採材1日目と採材2日目)を完全に無作為抽出し、PRRSウイルスのリアルタイムPCR及びPRRSウイルスの抗体検査を実施した。

3、結果

 表1に結果を示した。

pig journal2015年1月号 表1.jpg
 高産歴の母豚では口腔液の採取量が少なかったことから、産歴は口腔液採取率において有意な関係性を示した(p<0.01)。口腔液を採取できた個体数は1日目よりも2日目のほうがで有意に多かった(p<0.001)。
 全ての口腔液(48頭から採取されたn=96)でリアルタイムPCRが陰性、ELISA法による抗体検査が陽性であった。ELISA S/P比の解析により、1日目と2日目の間で強い相関を示し(X=0.82)し、採材日による有意差はなかった。 

4、結論と考察

 規模は小さな試験であるが、農場の疾病状況を監視するために養豚における個別飼育母豚からの口腔液採取の可能性を示唆し、同じ個別飼育母豚からの採取した口腔液のペアの検査結果から高い再現性が示された。農場において検疫-馴化手順の一環として口腔液検体の採取を取り入れることで、その後の母豚からの口腔液採取に慣れさせることが可能かもしれない。 

5、一言

 多くの母豚を飼育している農場において全頭採血するよりもストレスをかけず容易にPRRSのモニタリングを行う方法の可能性を示した論文である。
 表における採材率をみると、100%可能ではなく、まだまだ工夫が必要な段階のものではあるが、採材1日目よりも2日目で採材率が多くなっている点から、豚を慣れさせることで成功率が挙がる可能性がある。今後より口腔液の有用性についての研究が進むことで疾病対策につながることを期待したい。

Proceedings of the 23rd IPVS Congress ,Cancum,Mexico-June 8-11 ,2014 P.095

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