口腔液抗体によるPRRSVのモニタリング:コマーシャル農場における試験的研究

(Pig Jouenal 2015年2月号掲載)

口腔液抗体を根拠にしたPRRSウイルスのモニタリング:
メキシコ、ソノラにあるコマーシャル農場における試験的研究
PRRSV monitoring based on oral fluid antibody :A pilot study in a commercial farm in Sonora ,Mexico

1.序論

 養豚家にとって、豚繁殖呼吸障害症候群(以下、PRRS)は損失の大きい疾患の一つである。
 PRRSはほとんどの豚の生産地域に流行しており、PRRSウイルスを制御することが、豚の健康と生産性を向上させることにつながる。しかし、完全な制御策があるわけではないので、農場での実際の状況に基づいている必要がある。本研究の長期的な目的は、口腔液を検査サンプルとしてPRRSウイルスのモニタリングを実施することである。離乳舎と肥育舎で採取したサンプルの結果を報告する。

2.方法

 本研究は、メキシコのソノラにある母豚950頭規模の農場で実施した。農場は、試験開始6ヵ月前にPRRSの発生があったが、12週間隔でPRRSワクチンを接種することによって、繁殖豚はPRRSウイルスが安定化した。
 サンプル(口腔液)は、約30分間、各豚房に綿のロープを吊り下げることによって回収し、市販のELISAキットを用いて検査した。検査結果は、S/P比が0.4以上の結果を陽性と判定した。

3.結果

 採取した口腔液のELISA結果を週齢ごとに以下に示す。

pig journal2015年2月_図.pngのサムネール画像

pig journal2015年2月号_表.png


4.結論および考察

 本研究での口腔液を用いた検査は低予算で十分な情報が得られた。以前12研究室で行った研究において、高い再現性を得ることが可能であった。本研究において、S/P比の範囲は、0.13~8.49の間であり、9週齢にかけてPRRSのELISA抗体価は減少した。この結果から、どの時点で「ワクチンを接種すべきか」、「口腔液をRT-PCRやシークエンスのために用いるか」を決定することができると考える。今回の例で、遺伝子検査において最も適当なサンプルは、抗体陽転した離乳舎のものとなる。
 現在のデータは過去の1時点のみだが、PRRSウイルスが農場内で移動と変異をしていくため、農場でのPRRSの制御プログラムは継続的な検査および評価が必要となる。隔週ごとに口腔液を採取および検査することによって、農場でのPRRSウイルスの継時的な変化をとらえることができ、PRRSウイルスのコントロールを合理的かつ効果的に改善することができる可能性を示唆している。

5.一言

 前回の文献は母豚であったが、今回は離乳舎と肥育舎におけるPRRSのモニタリングとなる。
 離乳舎、肥育舎において本研究の結果から経時的なウイルスの変化をとらえるのに十分な結果が認められた。今後、血液検査に加え、より低予算で作業量も少ない口腔液検査の改良が進むことで、PRRSだけでなく他の豚の疾病対策につながることが期待される。

Proceedings of the 23rd IPVS Congress ,Cancum,Mexico-June 8-11 ,2014 P.098

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